気持ちのサンドバッグ

気になったことを調べて、まとめたり意見を書いたりします。あくまで個人によるエッセイなので、事実関係の確認はご自身でお願いします。

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野良猫を可愛がってはいけない ただひとつの例外を除いて

地域猫活動を知ろう

アニメ『ポケットモンスターサン&ムーン』で、仲間が死んでしまった子猫ポケモンをサトシが慰めるという回があった*1

そのポケモンは地域で有名な猫であり、定期的に市場から食べ物を盗む(もらう)などして、実質的に「地域猫」として暮らしてきた。

仲間の死を知ったサトシは、悲しみに暮れて食事をしなくなってしまった猫ポケモンに寄り添っていたが、猫が元気を取り戻したことをきっかけにその猫を家で飼うことにする。

 

この回は死を直接的ではなく、死を想起させる表象を使って象徴的に描いていた。

そのため、仲間の死を乗り越えていくポケモンの健気さや地域に生きる人の人情が強調された。

サトシに子猫ポケモンの餌を持たせてくれた市場の女性や、ポケモンの生き様を黙って見守るポケモン博士の行動は非常に印象深かった。

 

この回は、地域で猫を見守ることはよいことだと印象付ける内容であったと言えよう。

(マジで、この回を観て地域猫について調べようと思いました!)

 

地域猫への誤解

しかしながら、現実の地域猫についてはまだまだ誤解が多い。

野良猫に餌をあげる行為と単純化して解釈される場合もあり、その言葉自体が一触即発の危険を孕んでいる。

地域猫活動とは何であるかは、猫に興味・関心がない人も知るべきだ。

 

そこで、この記事では、地域猫活動が何であるか、どのような利益があるか、どのような問題があるかについて書いていく。

 

 

 

地域猫活動とは

地域猫活動は、野良猫を管理することで、飼い主のいない猫を減らす取り組みのことである。

前提として、日本の家庭で飼われている猫はほとんどが外来種であることを知っていただきたい。

つまり、ブラックバスと同様に、殖えると環境に害をもたらす。

無論、これは猫が可愛いということとは無関係だ。そのような猫を管理するために、以下のような条件が求められる。

 

不妊・去勢手術

不妊・去勢手術をしないと大変なことになる。猫は年に2-3回繁殖期を迎え、5-6匹出産するからだ。

富山県ガイドラインでは、形式上は飼い主の責任で繁殖を認めているが、単純計算で3年後には2匹が2000匹以上になると釘を刺している*2

飼えなくなった猫は間違いなく野生化し、地域にはびこる。

 

人間で言えば、人を不妊化させることは優生思想として忌避されている。

だが、猫のような繁殖力の高い、しかも野生していない動物の場合は話が別だ。

 

動物愛護の観点から不妊・去勢手術を避けるのではなく、動物を愛するために頭数を管理するのが飼い主の義務なのである。

これは地域猫についても同じで、子どもの産める猫が野生化してしまうと大変なことになる。

 

猫を不妊化させることのメリットは、子どもが生まれなくなることだけではない。

繁殖をしなくなるので、発情せず、性格が温厚になる。その上、マーキングの匂いも軽減される*3

 

とにかく、野良猫は一旦捕まえて、不妊化しなければならないのだ*4

手術を済ませた猫は耳の先が割れているので、割れていない猫がいたら間違っても餌をやってはいけない。

(ちなみに、野良猫の寿命は飼い猫より短いので、うまくいけばスタートから6年ほど経つと外で暮らす猫の数は激減する*5。)

 

餌とトイレ

餌をやることは地域猫の中心的な活動である。

ただし、定時・定量・定位置が原則であり、許可を得ていない人が無秩序に餌をやってはいけない。

猫は賢いので、人間が餌をくれることがわかったら、狩りや泥棒・拾い食いなどをせずに人間の餌を食べるようになる。

そのためにも、定時に餌を与えることが大切だ*6

 

地域猫ではない野良猫やその他の野生動物に餌が渡ってはいけないので、餌は投与が終わったら回収する。

こうすることで、(餌の種類にもよるが)腐敗による体調不良を防ぐことができる。

ここで勘違いしてほしくないのは、地域猫活動が勝手に餌をあげる輩を懲らしめろという考え方ではないことだ。

これについては後述する。

 

一方で、環境を保護するため、トイレの設置も必要である。

繰り返しになるが、地域猫活動は猫に餌を与えるだけの行為ではない。赤ちゃんにご飯を与えることだけが育児ではないのと一緒だ。

好きなところでさせていては地域の衛生状況が悪化しかねないため、猫が排泄するための場所を作らなければならない。

 

トイレと言っても、プランターに土を敷き詰めたものに猫が用を足すように細工をした簡単なものだ。

これがあることで、個人の庭が荒らされたり、勝手に用を足されたりせずにすむ*7

当然、トイレ以外で用を足されてしまうこともあるだろうが、それはボランティアの責任で処理し、現状復帰をする*8

このように、猫は人間と同様、餌を食べたら排泄をするものだという想定が必要だ。

 

障害と課題

迷惑な餌やり

野良猫に餌をやる行為と地域猫活動は違う。

言うなれば、お花見でお菓子を配った後にゴミを回収するのが地域猫活動であり、ゴミをポイ捨てさせるのが野良猫の餌やりである。

つまり、地域猫活動では、給餌とトイレの世話がワンセットになっている。

排泄物をしっかり処理して、(あるいはその排泄物から猫の体調を読み取って、)初めて猫を世話していることになるのだと思われる。

 

問題はそれだけではない。餌やりのタチの悪いところは、自分のあげたい餌を自分のあげたいときに与えるところだ。

前述の赤ちゃんの例で言えば、街で会った赤ちゃんに勝手に離乳食を与える形になってしまう。

赤ちゃんにご飯やミルクを与えたい人は保育士になればいいわけであり、その猫バージョンが地域猫活動の有志なのだ。

 

言い換えれば、餌やりの人を猫の世話が好きな人として認め、地域猫活動に取り込むことが推し進められている*9

 

もちろん、その人には餌やりだけを担当してもらって、あとの世話は他の人にお願いするなどの調整も可能だとは思う。

理解・賛同はするが活動に参加しない、ということも考えられる。

 

だが、個人の餌やり活動が地域猫活動の妨げになってしまうと、猫の不幸という(本来の意図と真逆の)結果を招くことになる。

猫の幸せという共通の目的があるのだから、できるだけ歩み寄って協力してほしいものだ*10

 

いずれにしても、勝手に餌を与える人の存在は地域猫活動における大きな障害になっている。

野生動物への餌やりが個人の自由ではないということは、奈良の鹿を見ていればわかるはずだ。

野生動物の人間への依存度が高くなると、人間も迷惑するし、野生動物も人間がいなければ生活できなくなる。

程よい距離感で生活するためにも、餌やりは管理された状況で行わなければならない。

 

周囲の理解

もうひとつの障害は、周囲の理解を得ることである。

地域猫活動は地域を巻き込んだ活動であり、有志が理解するだけでは実現できない。

つまり、地域猫活動が野良猫によるトラブルを助長するものではなく、それらを抑制するための活動であることを周知することで初めて成り立つのだ*11

 

特に、猫が嫌いな人であれば、猫を屠殺することが近道であると誤解するかもしれないし、猫を管理することが頭数削減につながることについては理解が難しいだろう。

 

餌の管理(×無秩序な餌やり)やトイレの世話を行うものであることを伝え、周囲に不快感を、あるいは猫アレルギーの人にアレルギー症状を起こさせないよう努めることも認知させるべきだ。

 

どのように認知させるかについては相手の状況によって異なってくるだろう。

餌やりや妨害行為などは聞き分けのなさに応じて、住民や活動主体、自治体の職員、警察などに指導や取り締まりを求めていくことになる。

 

だが、少なくとも猫が嫌いで餌やりをやっている人はあまりいないし、猫が嫌いなので嫌いな猫をもっと殖やしたいと思っている人は見たことも聞いたこともない。

実力行使に出るのは危機がさし迫った場合に限られるだろう。

 

一方、地域猫をこれから導入したり、すでに始めている地域では、住民に活動の内容や現状を説明し、理解を求めていく必要がある。

そのために、地区ごとに説明会を開いたり、町内会で話し合ったりしているようだ。

 

自治体の中にも、野良猫や地域猫活動におけるトラブルを防止するためにガイドラインを作っているところがある。

推進派には、導入・促進ありきではなく、相手の意見を尊重した理性的な対応が求められている。

 

猫への虐待・犯罪への悪用

猫を虐待する人のニュースは定期的に聞く。

だが、猫を虐待することは動物愛護管理法違反である。

2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処される犯罪であり*12、人ではないから命を自由にしてよいということにはならない。

 

人間の手によると思われる地域猫の不審死も何件か報告されており、地域猫への理解というよりも、猫にも命があるということへの理解が求められる。

 

猫に対する犯罪はそれだけではない。地域猫横流しも存在すると言われている。

日本でも有数の地域猫活動地域・江ノ島では地域猫の連れ去りがあったという報道もある*13

 

これが本当であれば、飼い猫を誘拐したも同然の事件である。

もう少し正確に例えるならば、児童養護施設で暮らしている子どもを誰の子でもないとみなして誘拐しているようなものだと言うべきだろう。

 

近所の児童養護施設の子どもが誘拐・殺害されたとき、あなたが子どもを持つ親であれば、施設の子どもだから関係ないと思うだろうか?

いや、うちの子も狙われるかもしれないと思うはずだ。

 

子どもがいない人であっても、事件に対して何らかの負の感情を抱くと思う。

これと同じことが猫に対して行われている。猫を飼っていない人は無関心でいるべきだろうか?

 

少々感情的になってしまったので、理性的な判断を下そう。地域猫を持ち去る行為は地域の公共財を持ち去る行為である。

 

届け出てそれを飼う分には法的な問題はないだろうが*14、毛皮を刈ったり虐待したりするなどの行為があった場合は動物愛護管理法違反となる。

どちらにせよ罪深い行為であることに変わりはないのだ。

 

猫は人間の都合で殖えている

可愛い飼い猫の写真ならTwitterInstagramで毎日のように流れてくる。

しかし、可愛いからと言って覚悟なしに飼い始めてしまうと、飼えなくなって捨てたり、保健所に預けたり(保健所は飼えなくなったペットの殺処分をします!)するという結果になる。

 

今は幸い、各種地域猫活動をする有志や保護団体のおかげで捨て猫が救われたり、保健所に預けられた猫が救出されたりすることもある。

その上、猫カフェも増えており、飼わなくても猫と親しめる環境が出来上がっている。

 

大事なのは、猫に命があることを意識し、人間が作ってしまったその命を全うできるよう誠意を尽くすことではないだろうか?

*1:ニャビー、旅立ちの時!」

*2:ねこを飼うときのルールと心得 | わんにゃんライブラリー | とやま動物愛護ホームページ

*3:

ねこを飼うときのルールと心得 | わんにゃんライブラリー | とやま動物愛護ホームページ

人も猫もやさしくなれる飼い方・育て方〜人と猫の共生を考えてみよう〜

*4:こうした活動は、捕獲・不妊化・返還を意味する英語の頭文字をとって、TNR(Trap-Neuter-Return)と呼ばれている。

*5:人と猫との共生:我孫子市公式ウェブサイト

*6:地域猫活動について – 具体的活動|公益財団法人 日本動物愛護協会

*7:地域猫活動について – 具体的活動|公益財団法人 日本動物愛護協会

*8:飼い主のいない猫/千葉県

*9:環境省 _ 人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト | 事例紹介

2010-2014年の盛岡市の事例では、管理の徹底など、活動への協力を求めることで餌やりの人に納得してもらえたそうだ。

*10:地域猫を実施していない自治体・地区の人は、不妊手術をしていない猫に勝手に餌を与える人を見たら、自治体や保護団体に問い合わせるのがよいと思われる。

*11:千葉県では、地域猫活動の条件として、「活動主体の活動内容が明確であり、地域の理解を十分に得るた めの継続的な周知活動を行えること。」を挙げている。

地域ねこ活動に関するガイドライン

*12:動物の愛護及び管理に関する法律 第44条

*13:【遠隔操作ウイルス事件】犯人がSDカード装着した猫亡くなる / 事件後に江の島の猫が激減「みんな誘拐されてしまった」 | バズプラスニュース Buzz+

この記事内の写真で耳がV字型に切られているのは虐待ではなく、不妊・去勢手術済みのサイン。

*14:許可を得て地域猫を引き取り、家の猫にする例もあるようだが、それはあくまで許可を取った場合であり、人間でいうところの里子や養子に当たる契約行為だ。勝手に連れ去るのは猫を愛する人の気持ちを踏みにじる行為であり、許されることではない。

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