気持ちのサンドバッグ

気になったことを調べて、まとめたり意見を書いたりします。あくまで個人によるエッセイなので、事実関係の確認はご自身でお願いします。(2017/7/31 一部画像の出典へのリンクが誤っておりました。現在は修正済みです。)

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アニメの地域格差:情報のグローバル化とはなんだったのか?

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Photo via pixabay

 

インターネットが情報格差を是正しない業界

インターネットの普及が情報格差を是正した。そういう思い込みが我々の中にある。なるほどeコマース(電子商取引・ネットショッピング)であらゆるものが地方在住者の手に届くようになり、電子書籍は配送の手間さえも撤廃した。その他にも、インターネットには卵の茹で方から祝辞の書き方まで、色々なことが載っている。そうしたモノや情報の移動において、インターネットが果たした役割は大きい。


だが、それが果たせていない業界もある。テレビ業界だ。中でもテレビアニメの扱いは悪く、東京と同じ番組が放送されていても、数週間〜数ヶ月遅れている場合がある。時間帯も明らかに子どもが観られる時間ではなく、東京と同時に放送しているケースはごく稀だ。


動画サイトの他にインターネットテレビ局というのも出来始めているが、テレビと同時配信しているものは深夜アニメの一部だけである。それどころか、ネット配信が7〜10日遅れるアニメやネット配信すらないものも見られる。実は若者のテレビ離れという言葉の裏で、地方在住者(特に子ども)はテレビアニメを観る機会を奪われているのだ。

 

 

 

アニメ放送の二大巨頭

本題に入る前に、今のテレビアニメ界の双翼を担う2つのテレビ局を紹介しなければならない。この2局があってこそアニメ業界は成り立っていると言っても、過言ではない。

 

テレビ東京(テレ東)

首都圏を中心とし、地方都市圏などにごく少数の系列局を持つキー局。子ども向けアニメの多くはこの局を中心に放送されている。重要なニュースがあってもアニメを流し続ける呑気なテレビ局として知られているが、日本経済新聞系の局なので企業やビジネスマンをサポートする内容の番組も多い。


テレビ東京のアニメの放送が遅れている、または放送されていない地域もあり、地方在住者の中には不満に思う人もいるようだ。そもそも、多くの地域ではテレビ東京の系列局自体がないため、これをアニメの未放送・放送遅延を地方局の怠慢とかキー局の傲りと評するのには違和感がある。テレビ東京以外のキー局は地方にも多くの系列局があり、そのキー局が放送するアニメは系列局で同時放送されている場合がある。むしろ、情報の移動が容易になるグローバル化の波にテレビ業界が追いついていないこと、そのせいで視聴者の一部が割りを食っていることが問題なのだ。


もちろん、ローカル番組にもそれなりの付加価値はあり、地方系列局にも存在意義はある。だが、東京(や大阪・愛知)で作られた番組は系列局を通じての放送が前提になっているため、電波によって放送の範囲が限られたり、収益の都合上、同じ時間帯に放送できなかったりする*1。でも、ネット配信になれば、少なくとも電波の限界は突破できる。商品の売り上げが命のアニメにおいては、販促が成功すれば視聴率が低くても問題ない。つまり、ネット配信さえできていれば、都市と地方の間のアニメの情報格差は生まれなかった。

 

TOKYO MX

東京を中心とする首都圏の一部で視聴可能なローカル局。深夜アニメの多くはこの局で放送されている。全国区のメディアと違い、情報番組ではディープな議論や鋭い視点の報道が活発に行われる。最近は、東京スカイツリーのおかげで「テレビで」受信できる人が増えているようだが、まだまだ範囲は狭い。キー局ではないが、深夜アニメ放送局としての実績が積まれていて、アニメ製作会社もこの局の放送枠を積極的に求めているようだ。


この局はネット同時配信サービス(全国)を提供しており、ネット配信で最先端を行く局でもある。これにより、東京の人にしかアニメを観てもらえず、映像ソフトを買ってもらえないという問題は解消される。公式が配信の場を用意することで、違法配信も減りそうだ。

 

実況文化の開花と地方民の放置

実況文化によって、地方民はネット社会から取り残されている。たしかに昔は、放送が遅れていたり、放送がなかったりしてもそこまでの影響はなかった。インターネットができてからも様々な場所で実況行為は行われてきたと思うが、個別のサイトの個別のページなど閉ざされた空間で行われていたので、地方民はそれを見なくても済んだ。


ところが、SNSが普及すると状況は一変する。放送中や放送直後にハッシュタグやキーワードがネットのトレンドになる。だから、放送を観られない地方民は置いていかれるのだ。もちろん、録画したものをひとりで実況することも可能だが、都市の人と同じ回が観られるのは数ヶ月後の早朝かもしれない。このように、テレビ番組の実況という文化は世界中をつなぐインターネット上で行われるにもかかわらず、地方民を置き去りにしていた。

 

頼りない代替案

本放送ではない主な視聴方法が大きく分けて3つある。ひとつは本放送を録画し、後で視聴する方法。もうひとつは、BSでの放送を観たり、録画したりする方法。あとひとつは、ネット配信を観る方法だ。一見、これらの方法があれば、放送の格差は縮まるように思われるが、そうではない。これらは現状、都市の人のためにしかならないと言わざるを得ない。

 

録画機は無駄

東京の人でも、夕方や朝に放送されたアニメを録画したものを夜に観る人はいるだろう。だが、地方の人は東京の人が録画している番組を同じように録画する権利を持っていない。録画できるのはその時間に放送していることが前提であり、放送していなければいつまで経っても観られないのだ。海外在住の方で、日本の知人からテレビ番組の録画を送ってもらうというケースもあるようだが、当然遅延がある。もちろん、東京と地方の間でそれをやっても同じだ。


一方、深夜アニメでは東京と同時に観る旨味はそれほどない。東京の人でもリアルタイムで観ていたら、明日の学校や仕事に影響する。そもそも、放送局によって放送日時が変わる(関西先行の場合もある)ので、テレビ放送をリアルタイム実況する旨味があまり感じられない。ネット配信が遅くなる番組に関して、録画したものを観るというのが一番効率が良さそうだ。逆にいえば深夜アニメは、ネット配信がBSやローカル局の放送に先行するなら、保存以外の目的では録画する意味はない。

 

BS放送は周回遅れ

テレビ東京のアニメは、1週間以内にBSで放送(事実上の再放送)されるものが多い。これを録画すればいつでも観ることができるし、数ヶ月遅れになることもない。時間が許す場合は実況することも可能だ。だが、それでも遅い。


現状、BSは首都圏・都市圏住民にとっての見逃し放送的な役割を持っている。災害やニュース速報のテロップが録画に残らないため、「完全版」として保存する人もいるようだ。だが、この都市住民のためのバックアップが、地方住民にとっての唯一の放送となる場合がある。都市の人から一回り遅れていると言って差し支えないだろう。


例えば、現在テレビ東京系で放送中の『アイドルタイムプリパラ』は、火曜日の午後5時55分に系列局での本放送がある。その回がBSジャパンで放送されるのは1週間後の火曜日の午後5時29分だ。都市住民が観たものと同じものを観るために、実に1週間も待たされる。年間行事を先取りした話が行事の後になるのは日常茶飯事だ。こうした放送の遅れは商戦にも関わってくる。テレビ局やアニメ製作会社には、遅れて放送しても意味があるのか考えてほしい。

 

2017/5/31追記!

なんと『アイドルタイムプリパラ』が「あにてれ」で当日配信、「ニコニコ動画」「ニコニコ生放送」で3日遅れの配信に変更になった。訂正してお詫びしたいところだが、地方在住のプリパラファンにとってはなんとも喜ばしいことではないだろうか。

https://twitter.com/anitv_pr/status/869499165125914624

 

インターネット配信が解消しない格差

配信の遅さ

それならネット配信があるじゃないかという声があるのも織り込み済みだ。だが、ネット配信は本放送から遅れる場合が多い。10日間も遅れる場合があるし、そもそも配信がないものもある。配信サイトは多岐にわたるため、東京の人と同じものを全部観るにはいくらかかるのやら……。


そもそも、なぜ放送直後に配信できないのか? それは、どうやらBS放送によるところが大きいらしい。BS放送されている多くの子ども向けアニメは、BS放送の当日に配信がスタートする。BSの放送が配信日のひとつの基準になっているようだ。BSでの放送がないものは本放送直後に配信がスタートする場合もあるが、BSでの放送がある番組で本放送直後に配信されるケースは少数派である。

 

リアルタイム性の低さ

それから、ネット配信のもうひとつの難点としてあげたいのが、実況がしづらいことだ。ネット配信はいつでも観られることが売りなので、同時に観て実況するということが起こりづらい。


ここで、ニコニコ動画があるじゃないかというツッコミが入る。たしかにニコニコ動画にはコメントを動画上に流す機能があり、みんなで実況するリアルタイム性を疑似体験することができる。だが、コメントの投稿を禁止しているアニメもあることを指摘しなければならない。YouTubeももちろんコメント禁止のものが圧倒的多数であり、実は動画配信でもリアルタイム性というのは担保されていないことがわかる。

 

動画配信の変革

違法配信が無くならない意味

配信サイトができても、大人の政治で配信が10日遅れになっては意味がない。その間に違法配信が蔓延し、公式配信が意味をなさなくなる。そもそも、都市の人と地方の人で、違法配信から受ける違法な恩恵の意味合いは変わってくる。現在、民間放送連盟(民放連)は、遠藤憲一さんが出演するCMで違法配信撲滅キャンペーンを行なっている。その前提にあるのは、都市に住んでいる人が放送を見逃してしまったときの救世主(違法)の存在だ。

 

www.j-ba.or.jp


アニメに関しては必ずしもそれが当てはまらない。もちろん、アニメの違法配信には、見逃した人への救済(違法)という意味もあるかもしれない。だが、放送されていない地域への救済(違法)という意味もある。上記に示したように、BS放送や録画機の存在は、地方に住んでいる人が東京の人と同時に観られないことへの補償になっていない。Twitterでトレンド入りしていたら、地方の人はその情報の詳細を早く知りたくなるわけで、10日間も待ってはいられないはずだ。結果として、違法配信が賑わってしまうのである。

 

広がる有料配信

dアニメストアAmazonプライムビデオなどの有料配信サービスが充実してきている。こうしたサービスはより多くの動画とよりよい動画体験をユーザーに提供する。例えば、無料サイトでは1週間しか配信できなかったアニメが、有料サイトでは都度課金を条件に公開されていたり、見放題になっていたりする。


その上、有料サイトは画質や読み込み速度などのユーザーの不快感を取り除くこともできる。例えば、niconicoでは、プレミアム会員に高画質を保証し、生配信からキックされないよう優遇措置を取っている*2。こうした有料サービスは競争が激化しており、有料動画サイトが今のCS・ケーブルテレビに取って代わる日も近いのかもしれない。動画配信サイトや配信する主体には、ぜひ動画配信をうまく収益につなげてほしいものである。

 

インターネットテレビ局の登場

リアルタイム性を疑似体験する装置として注目されているのがインターネットテレビである。インターネットテレビでは、実況しながらアニメを観ることができる他、アニメから派生したオリジナル情報番組なども配信されている。一部のアニメは地上波と同時に放送してくれるので、地方の人*3でも同時に盛り上がれる。相変わらずテレビの本放送から遅れる場合もあるが、再放送を何度もして、いつでも何回でも実況できるようにしている。地上波から先行して放送しているものもあり、都市と地方の格差を是正してくれることがますます期待される。


ただ、現在放送中の子ども向けアニメに関しては、『クレヨンしんちゃん』や『ドラえもん』など*4のファミリー向けアニメの古い回が配信されているぐらいにとどまっているようだ。地方の子どもたちのために、新しいアニメも放送してほしいものである。

 

同時配信への希望

現在、同時配信の解禁(現在NHKのみ禁止)に対し、民放がブレーキをかけているという構図があるようだ。民法が全ての番組を配信するには多大なコストがかかってしまうのである*5。一方で、テレビアニメといえば、ほとんどが玩具やゲーム、あるいはブルーレイなどの販促のためにある。放送が遅れている地域でもCMが放送されるとはいえ、放送を遅れさせることはスポンサーにとっても痛手なはずだ。もちろん、SNSでの実況には話題性を高める効果もある。視聴者がひとつの場に会することで視聴者の意識がより高まり、番組への愛着や理解もより深まる。ネット同時配信があった方が、多くの人の幸せにつながるはずだ。


ところで、日本テレビ系のHuluが炎上している中、ネット配信事業でテレビ東京とTBSとWOWOWが提携することが報道されている。ネット配信業界が再編を迎えようとしている今、テレビ局にはネット同時配信についても検討し直してもらいたい。

nlab.itmedia.co.jp

 

www.nikkei.com

*1:地方系列局aではキー局Aのニュース番組を放送するため、系列ではないB局のアニメは流せないなどの例が挙げられる。もちろん、ニュースの方がアニメより重要なコンテンツというのもあるが、少子化の現代、大人向けの方が確実に視聴率が稼げる。

*2:ニコニコ生放送には、視聴者が規定の枠を超えると、一般会員を自動的に追い出す機能がついている。

*3:画質以外はテレビの上位互換なので、都市の人もむしろ、こっちを使った方がいい。

*4:このふたつはいずれもテレビ朝日系列のアニメである。Abema TV自体がテレビ朝日系列なので、このふたつの放送に関しては納得がいく。もちろん、テレビ朝日系列以外のアニメもたくさん放送されているので、人気があればもっと放送されるかもしれない。

*5:NHKと民放、ネット同時配信めぐりバトル : 深読みチャンネル : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 1/3

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