気持ちのサンドバッグ

気になったことを調べて、まとめたり意見を書いたりします。あくまで個人によるエッセイなので、事実関係の確認はご自身でお願いします。

「子どもは3人以上産め」が問題発言である理由

子育てをナメている失言

女性が子どもを3人以上産むべきで、そうしないと他人の金で高齢者施設に通うことになるという趣旨の国会議員の発言が物議を醸した。

mainichi.jp

 

この発言は差別的で不適切だ。

しかし、ネット上では議員の発言を肯定的に受け止める人もいる。

そこで、私なりに反論していく。

 

 

 

性の軽視

まず、何よりもまずいのは、

の3点である。

 

女性蔑視

今回の発言は、女性が子どもを産み育てるためだけの存在であるかのような印象を受ける。

「そのような考え方は間違っている」という趣旨の発言をしたのであれば話は別だが、今のところそのような情報は出ていない。

 

女性に対してのみ、そのような発言をしたことも問題だ。

議員が女性に偏重して義務を課しているのであれば、女性差別にあたる可能性がある。

 

男性の子育てという視点の欠如

そもそも、妊娠〜育児には男性パートナーの存在も不可欠である。

子育てが女性の仕事という時代はとっくに終わった。

今は、昔と事情が違う。

 

核家族化・都市化による育児の協力者の不在は、ワンオペ育児をより困難にしている。

Photo by J carter from Pexels

 

たしかに、子どもを産むのは女性で、母乳を出すのも女性だ。

この事実に変わりはない。


でも、昔は近所や祖父母の助けを借りていたはず。

核家族化・都市化が進んだ現代、女性は本当にワンオペで育児をさせられているのだ。


その状況を改善するためにも、男性の育児は不可欠である。

 

 

「男性の育児参加」とか「イクメン」という言葉もあるが、最近では「手伝い程度にしか育児をしない」というネガティブな意味で捉えられることもある。


男性は育児に「参加」しているのではなく、育児をしているのだ。

 

リプロダクティブ・ヘルス/ライツ

出産に関することは、カップルの自由である。

親や他人が、ましてや国会議員が押し付けることは許されない。

 

性と生殖に関して自由に決めてよい権利と、それを保証するための後ろ盾を「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」という。

その言葉が意味するのは、自分の性と子どもを産むことに関する正しい情報が与えられ、避妊し、性感染症を防げること*1

そんな状況において、男女が妊娠〜子育てについて自由に決めることができるということだ。


当然のことながら、女性が安全に、健康な赤ちゃんを産める環境も守られなければならない。


参考:

www.joicfp.or.jp

 

そんなことを守っていては日本が滅亡するという反論もあるかもしれないが、それは誤解だ。


国家の持続可能な発展のためには、リプロダクティブ・ヘルス/ライツが必要である。


産みたくない人・経済的に安定していない人が親や国家の要求で子どもを産ませられた場合、それこそ虐待や貧困が起こる。


そうではなくて、男女にとって子どもを産むことが好ましいと思えるような環境整備が求められている。

 

その他の問題点

命の軽視

議員の発言は、子どもが命であるという視点がかけている。

 

数を産めばよいというのは、人間が人口統計のために存在するかのような印象を受ける。

3人産んで本当に幸せに暮らせるのか?

生活が成り立つのか?


そういうことが考慮されていない。

 

それに加え、介護をさせたり、自分を養わせるために子どもを産むべきという内容も含まれていた。

それは若者から自由を奪う行為である。


子どもは介護のための生け贄でもなければ、不動産のような投資の対象でもない。

 

不妊患者への差別

不妊患者に対して子どもを産めというのは酷なので、そうでない人には産んでほしいという発言もあった。

この発言には「不妊患者は人類の義務を果たせない存在」「他人の子どもの税金で介護施設に通うべき」という暗黙のメッセージが込められている。


不妊治療は経済的・精神的な負担も大きく、必ずしも成功しないことから、不妊患者からの批判は必至だ。

 

繰り返しになるが、子どもを産み育てるのは、カップルの自由であり、義務ではない。

 

炎上の背景:育児環境の未整備

批判が強まっている要因として考えられるのが、子育て世代や子育てを検討する人々の不満である。

 

低賃金でとても子どもを養えそうになく、3人も育てるなど不可能。

 

保育の人手不足で、預ける保育園がない。その背景には保育士の低賃金がある。

本来であれば、女性の社会進出で保育の需要が伸び、保育労働の需要も増えるはずなのに、保育士の負担は増すばかりだ。

 

 

加えて、男性の育児休業を含む制度の不履行も問題である。

 

参考:

ikumen-project.mhlw.go.jp

 

男性の育児休業は法律*2で認められているにもかかわらず、取得を許さない風潮がある。

それに、長時間労働や子育て世代への軽視が災いして、仕事と育児を両立できない。

 

そうした問題が今回の不適切な発言への反感を強めている。

 

誰が子育てを応援しているのか?

ここまで「3人産め」がいかに暴論であるかについて説明した。

 

与党の国会議員ですらこの体たらくとなれば、この国で子育てを一番応援しているのは、政府ではなく西松屋なのかもしれない。


ネットユーザーや高齢男性などで、実質的な応援を何もしていないのに「3人産め」という根性論を主張するのはやめていただきたい。

 

とはいえ、LINEで情報を発信する自治体など真の意味で子育てを応援してくれている人は意外とたくさんいる。

 

出産を希望する方、子育てをしている方におかれては、周りにそうした支援者がいることをぜひ確認してほしい。