気持ちのサンドバッグ

気になったことを調べて、まとめたり意見を書いたりします。あくまで個人によるエッセイなので、事実関係の確認はご自身でお願いします。

論文形式の試験って怖くね?

出している例は適当にでっち上げたものなので、信憑性どころか議論としての有効性すらありません。

 

 

前回は、試験形式の話をしましたが、おそらく普通の大学生が一番困るであろう形式が論文形式です。私がいたICUでは必修授業で論文形式のテストのやり方を習ったのですが、そんなもの書いたことないという方もいるのではないでしょうか?かなり大まかに書いたので、第一歩として、ざっと目を通すぐらいでお願いします。まともに探していませんが、もっといい本があるはずです。

 

 

事前準備

読むべき文章があるなら、文章を読む

事前に渡される場合*1は読んでおき、重要に感じた部分や疑問に思った部分はハイライト&メモして覚えておく。

 

自分なりの答えを出してメモにまとめる

考えうる短い答えをとにかく書き連ねよう。その中から、使えると思った答えを採用する。

 

自分の考えに根拠づけをする

主張だけしているならば、その人は無責任で信憑性がない。その主張にはそう考える根拠が必要である。試験で読む文章がある場合は文章からも根拠を見つけてよい。

 

議論に肉付けをする

文章中に根拠を示す部分がある場合は、それを言い換えたり、説明したりする。なぜそれが根拠になるのかは明確に示そう。法律や法則も同様。自分で考えた理由なども詳しく説明する。誤解を招きそうな場合は「◯◯ではない。むしろ、××である。」や「たしかに〜。しかし……」の構文を使おう。メモの段階なのであくまで簡単に。

 

序論と結論

これで、頭の中やメモ用紙の中で、小論文の中身が決まった。だが、小論文には、序論と結論が必要である。先生によっては、序論は省いてもよいという人もいるだろう。結論も、一部を省略してもよいと言われるかもしれない。今回はフルで書くことを想定して、序論と結論の書き方を見ていくことにする。


トピック・センテンスを先に

序論の初めは、それとなく文章の内容を示唆する文が望ましい。その上で、論文なので自分の主張も混ぜる必要がある。話題を提供しつつ、主張も行うのがトピック・センテンスだ。

 

例1:
問題:運動会における組体操の実施の是非について論ぜよ。

トピック・センテンス「古代ギリシャにおいて、スポーツは観客を大いに楽しませる大衆的な娯楽であった。」

一見、運動会という現代の競技大会に関するトピックから飛躍しすぎているように見えるが、歴史的観点から論ずるのであれば問題はないだろう。

例2:
問題:第二次世界大戦終盤における広島や長崎における原子爆弾の投下は、真珠湾攻撃の報復であり、当然の報いだという考え方がある。これについて自由に論じよ。

トピック・センテンス:20世紀において、戦争は外交における汎用性の高い切り札であった。

 

おそらくこうトピック・センテンスを設定した場合、降伏に至るまでの外交交渉を詳しく論じるのであろう。(確認だが、これは例のための出まかせであり、事実とは限らない。)

 

さて、トピック・センテンスの後は、トピック・センテンスで扱った話題の説明や、同じくトピック・センテンスで扱った問題の現状や背景を述べ、この論文の主張を示すシーサス・ステイトメントに繋げる。例えば、ある事件について論ずるのであれば、その背景を詳細に書く必要がある。あるいは、上記の例で使った戦争の問題の場合、戦争が何と何によるどういった何なのかを定義する必要がある*2。でも、そうした背景や定義を説明するだけでは議論に移行できない。「そもそもスポーツというものが誕生したのは、◯◯年頃であり、当時は〜だった。しかし、大衆スポーツの観点から、運動会においては組体操は実施すべきでない。」のように時系列を超越した序論にすると、読者は頭にハテナマークを浮かべるだろう。序論は、読者を自然に話題へと導くものなのだ。広い話題をシーサス・ステイトメントにつながるように、狭く具体化しよう。


シーサス・ステイトメントを書こう

問題文に対するあなたの理解を示すために、問題文に従ってシーサス・ステイトメントを作ろう。シーサス・ステイトメントは論文の主旨と構成を説明する文である。例えば、「第二次世界大戦で日本が敗戦したのはなぜか?」という問題文であれば、「第二次世界大戦で日本が敗戦したのには、◯◯と××と△△という3つの主要な要因が関係していた。」となどという文面にしなければならない。「運動会における組体操の実施の是非についてどう考えるかを述べよ。」という文であっても、「◯◯の観点から、運動会において、組体操は実施すべきでない」というように、問題文に沿った内容にしなければならない。


おまけ:論文の構成を書く

シーサス・ステイトメントに複数の要素の要約(例:「日本政府が置かれた過酷な状況」など)を書いた場合などには、それぞれが何なのか説明する必要がある。つまり、どの順番で何を説明するのか書く必要があるのだ。そうでない場合でも、書いてもよい。これはなくても問題ないが、なければたくさんの論文を読むTAや教授にとって不親切だ。例えば、

本論文では、第一に、◯◯が日本軍の動向に与えた影響について論じる。第二に、××が日本軍にとっていかに重大だったかに言及する。第三に、△△が決定的な要因であることを指摘する。本論文の最後には、この研究分野における課題について言及する。 

などというように、文章の構成を書いておくと、分かりやすい。ただし、これを書くことで罫線を無駄に消費して困るようであれば、書く必要はない。


結論

順番が前後してしまうが、先に結論の書き方を教える。結論は、シーサスステイトメントの言い換えから始まる。その後、本論の要約に入り*3、最後のメッセージを書いて結論は終わりだ。最後のメッセージには、その研究分野の将来の展望を書いたり、別の問題と関連付けたり、文献から文を引用することで議論に深みを与えたり、あるいは用語を再び定義して新たな議題を作ったりすればよい*4

 

本論を書く

大まかな構成について

本文の初めは、接続表現で始めると流れが綺麗だ*5


トピック・センテンスを書く

本論のトピック・センテンスは、シーサス・ステイトメントを参考に作ろう。シーサス・ステイトメントの中で主旨に関する部分(例:「第二次世界大戦」「日本軍」/「運動会」「組体操」)は必ず入れたい。その上で、最初に考えた自分なりの答えを組み込む。トピック・センテンスより後は、最初に考えたものを埋めていくだけである。

パターン1:説明してから根拠を2つ述べる

問題文:ものに名前を書くことの是非について論じよ。

シーサス・ステイトメント「ものに自分の名前を書くことは、個人情報の保護と防犯の観点から考えれば、望ましくない。」
トピック・センテンス「ものに自分の名前を書けば、個人情報を危機にさらすことになる。」

説明
自分なりの答えを説明する。「人はものに名前を書くことで、そのものの所有権を保護する。だが、その行為がかえって自分のプライバシー権を脅かしている。」

根拠1
そう考えた根拠の1つ目を述べ、説明する(言い換えたり、まとめたりする)。「ものに書いてある人の名前がソーシャルネットワーキングサービス(SNS)で悪用されるおそれがある。実名制SNSFacebookには…」

根拠2
そう考えた根拠の2つ目を述べ、説明する(言い換えたり、まとめたりする)。「ものに書いてある人の名前が犯罪に悪用されたケースがある。2016年〜」

総括
トピック・センテンスを言い換える。「このように、個人情報を守るためにも、ものに名前を書くべきではない。」

 

 

パターン2:根拠を1つ示してから説明をし、根拠を1つ述べる

トピック・センテンス「ものに自分の名前を書けば、個人情報を危機にさらすことになる。」

根拠1
そう考えた根拠の1つ目を述べ、説明する(言い換えたり、まとめたりする)。「ものに書いてある人の名前がソーシャルネットワーキングサービス(SNS)で悪用されるおそれがある。実名制SNSFacebookには……。つまり、ものに名前を書くことは、インターネット上で監視されるというリスクを伴う。」

説明
自分なりの答えを説明する。「ものに名前を書いて自分の所有権を保護するという行為がかえって自分のプライバシー権を脅かしているのだ。」

根拠2
そう考えた根拠の2つ目を述べ、説明する(言い換えたり、まとめたりする)。「同様に、ものに書いてある人の名前が犯罪に悪用されたケースがある。2016年〜。換言すれば、名前という個人情報は、それひとつで人の心を惑わすほど繊細なものである。」

総括
トピック・センテンスを言い換える。「このように、個人情報を守るためにも、ものに名前を書くべきではない。」

 

 

 

こうした本論のパラグラフを、シーサス・ステイトメントで示した根拠の数だけ作る。この後、結論を書けば小論文は完成だ。論文形式の筆記試験は、インターネットや文献を使えないため、明らかなひょう窃でない限り多少の間違いは許されるだろう。間違いを恐れて何も書かなければ点にならないので、勇気を出して書いてほしい。


注意1:引用

引用する際の注意点は、与えられた文章から引用する場合はその箇所をしっかり示すことだ。引用形式は先生に聞けばよい(人によって常識が異なるため)。まず、本文から文や部分をそのまま抜き取った場合は、日本語であれば鉤括弧、英語であればダブルクォーテーションマークをつける。そうでない場合、言い換えや要約をする必要がある。一般的な学術用語以外は言い換える。英語であれば4語以上のものは確実に別の語に言い換えるべきである。言い換えろと言われても難しいかもしれないが、構文ごと変えれば確実に言い換えができている*6


注意2:要約

要約の注意点としては、主張にフォーカスする形で要約することが挙げられる。例えば、文章中に、第二次世界大戦中の各国の動向が書かれていたとする。「アメリカはなぜ原爆を日本に投下したのか?」という問題文であれば、明らかにドイツの情報は重要でない。不要な情報は省き、できるだけ日本とアメリカにフォーカスして文章をまとめるのが賢明だろう。


注意3:試験上のルール

試験を受ける上で、担当教員から言われたルールは守ろう。よくあるものとしては、「ボールペンで書き、誤字は二重線で訂正すること」や、英語の場合、ダブルスペース(1行おきに書く)などがある。段落の最初は1文字(英語なら5文字)空けるというのも忘れないようにしよう。

 

注意4:学術論文

試験で書くのは、学術論文である。そのため「だけど」とか「多分」と言った俗っぽい言葉は使ってはならない。論文は「です・ます」調ではなく、「だ・である」調で書く。主語に「私(一人称)」は用いない。

例:

×私は、人を殺したからと言ってその犯人を殺すのは間違っていると思うから、死刑制度には反対です。

 

◯死刑制度は、人の命を奪うという倫理に反する悪事を働いた人の命を奪ってもよいという倫理的な矛盾を孕んでいる。

 

 

参考文献

トピックセンテンス関連 

Examples of Topic Sentences

Purdue OWL Engagement


シーサス・ステイトメント関連

Thesis Statements and Topic Sentences

Thesis Statements - The Writing Center

Purdue OWL: Creating a Thesis Statement

 

*1:本番では新しい紙を配られると思うので、注意しよう。

*2:語の定義をすることは大事だが、できるだけ焦点を主張に合わせてほしい。例えば、外交交渉の縺れという観点から第二次世界大戦を説明したい時に、「縄張り争いとしての戦争は旧石器時代から始まっていた。」などという話から始めたら、いつまで経っても戦争を定義することに繋がらない。せめて近代から始めよう。そして、日本側から問題を考えたい場合は日本側、アメリカ側から問題を考えたい場合はアメリカ側の近代戦争史を振り返ればよいだろう。

*3:省略してよいと言われれば、省略してもよい。

*4:Ending the Essay: Conclusions |

*5:パラグラフが長い場合、途中で切ってパラグラフを改めることがあるため、論点が変わったことを示さないと不親切だ。

*6:ただし、情報の流れの乱れに注意しよう。例えば、友達に出会い頭にいきなり「ディズニーランド楽しかったよ」と言っても、聞き取れないか、意味がわからないと思う。それは、急にディズニーランドという馴染みのない主題を出したからだ。だが、「週末何してた?」という質問から始めるだけで自然に話題に入れる。でも、急にUSJの話に移ったら、混乱は回避できまい。「ところで、大阪にも行ったんだけど」という話題転換が必要だ。このように正しい情報の流れを作ることは重要だ。主語でいきなり極端に新しい話題を出されると困るのは論文でも同じである。