気持ちのサンドバッグ

気になったことを調べて、まとめたり意見を書いたりします。あくまで個人によるエッセイなので、事実関係の確認はご自身でお願いします。

『ボルケニオンと機巧のマギアナ』から見るペット遺棄問題

ポケモン映画とペット問題の意外な関係!?

もう『ポケモン・ザ・ムービー ボルケニオンと機巧のマギアナ』はご覧になっただろうか?この映画では、人間とポケモンが手をとりあう社会について取り上げている。まだご覧になっていない方は、この画面を閉じてほしい。

 

 

 

 

 

 

さて、この映画には、2つの印象的なシーンがあった。ひとつは、サトシに抱きしめられた「ゴクリン」が怖がるシーン、もうひとつは、マギアナがエリファスに「捨てられる」シーンだ。いずれのシーンにおいても、人間の都合でポケモンを捨てていることがわかる。たしかに、ゴクリンはトレーナーに強く抱きしめられた後捨てられたと劇中で言われているが、抱きしめたことは免罪符にはならない。マギアナも電子ペットとして作られたが、軍事的に悪用されるという危惧から、遠い野に放たれた。だが、マギアナという「人格」に非はない。まさに、人間の都合だ。一方、サトシだってポケモンと何度も別れているではないか、という指摘もあるだろう。だが、基本的に、ポケモンのために別れたり、オーキド博士などに里親を頼んだりしている場合が多い。現在放送中のXYシリーズでも、ヌメルゴンは故郷の湿地帯を守るためにサトシと別れた。

 

サトシの場合は、「飼い主」として最低限のことをしているから問題ない。しかし、トレーナーがポケモンの事情を一切考えず、人間の事情でポケモンを捨ててしまっているとしたら問題だ。同じことは現実にも言えて、世の中では野生化したペットが問題になったり、飼い主に虐待を受けたペットが人間を恐れているといったケースを耳にしたりする。ペットには生きる権利があり、人間の都合で無責任に「買ったり」捨てたりしてはいけないのだ。

 

ペットはむやみに買ってはいけない

動物の赤ちゃんが手軽に買えることで、ペットの、動物としての健全な成長が阻害されている。例えば、日本の犬市場においては、子犬信仰が強いことが指摘されている*1。人々は見た目がいい子犬を好み、大きい犬を嫌う。そのため、機を逸した犬が処分されやすくなっている*2。処分自体は法律で規制されたが、生かせられている犬は、単なる子種として煩雑に扱われる。人間に飼われた子犬も、小さいうちから人間が少ない数を育てるため、動物としての社会性が育たない*3。我々人間が親と触れ合わないと社会性が育たないと同じだ。補助犬にはこれを育むための過程がきちんと設けられている*4が、ペット犬の規制はあってなきがごとくなっている。動物園の動物の赤ちゃんは専門家が知識を持って育てているわけだが、普通の人が育てたら果たしてどうなるだろうか?必要な知識がないなら、大事な時期に対して責任を持つべきではない。

 

ペットは愛情を込めて育てなければならない

ペットにされる動物の多くは、見た目の可愛らしさばかりがクローズアップされ、命の尊さが忘れられがちだ。たしかに、ペットの可愛らしさに癒しの効果があることは科学的に証明されている。だからと言って、命あるものをアロマキャンドルのように、溶けきるまで使ってはいけないはずだ。子犬や子猫は、人間と同じ動物の赤ちゃんである。「子人間」を育てていて、手に負えなくなったから、引っ越し先で飼えなくなったから、高齢で育てられなくなったから捨てるということがあっていいはずがない。動物も同じだ。中には、大きくて可愛くないからほしくないとか、大きくなったからもういらないと思う人もいるのかもしれない。だが、可愛いかどうかは、見た目ではなくて育てる対象へ抱く当然の感情なのではないだろうか?ペットを「可愛くなくなった」からと言って、捨てるべきではない。本当に育てることが難しくなった場合は、しかるべき手段をとるべきだ。

 

ペットは捨ててはいけない

動物愛護管理法には、飼い主がペットの面倒を一生見るという義務が明記されている。当然、飼えなくなったら代わりの飼い主を探すか、そういった業務を代行する団体に相談しなければならない。環境省のパンフレットでは、ペットを野生に放つと、周囲の人間に噛み付いたり、周囲の生態系を破壊したりするという害があることが指摘されている*5。(特に赤ちゃんのうちから飼っている)ペットは人間に管理されて生活しているわけで、飼い主の人間がいない場所では餌ももらえず、まともに生活できないはずだ。同じく命ある人間の子どもに同じことはしないのだから、ペットも捨てるべきではない。

 

人間の事情で好き勝手してはいけない

このように、人間の都合でペットの命を粗末にすることはあってはならない。映画のゴクリンマギアナが何かやむをえない事情で捨てられてしまったことは容易に想像がつくだろう。しかし、その「やむをえない事情」は、ポケモントレーナーの都合に過ぎない。くどく子どもの例を使うが、もしあなたが重病にかかり、子どもが育てられなくなったら、あなたは「仕方のないことだから、我慢してね」と子どもを野に放つだろうか?きっと親戚に預けたり、里親・養親を募ったりするはずだ。人間であれば当然のようにできることが、動物に対してはできなくなるというのは、大変残念なことだ。もちろん、ボルケニオンのようなセーフティネットは必要だが、まずはトレーナーがポケモンを捨てないところから始めるべきではないだろうか?