気持ちのサンドバッグ

気になったことを調べて、まとめたり意見を書いたりします。あくまで個人によるエッセイなので、事実関係の確認はご自身でお願いします。

Nintendo Switchはゲーム機に触覚を与えた!

ゲームから画面が消えたということ

Nintendo Switchの全体像がわかってきたが、一番に注目したいのはやはり、HD振動とモーションIRセンサーのついたJoy-Conだろう。Joy-Conは触覚を出力することができるため、テレビゲームをこれまでにないものへと進化させる。

 

プレゼンテーションの内容と各種紹介動画はこちらの公式サイトへ

www.nintendo.co.jp


 

 

触覚を出力するということ

触覚を出力するというのは、画期的なことである。それはゲームに対する我々の認識を文字通り大きく塗り替えるものだ。

 

従来のゲーム

従来のゲームにおいて我々が感じるのは、もっぱら視覚と聴覚であった。壁にぶつかると「ぷにぷに」という音がし、映像ではプレイヤーキャラクターが先に進めないので、壁があって進めないのだということがわかる。このゲームを音声オフでやると、壁にぶつかったことが分かりづらくなる。もっとも、映像を奪われればゲームは全く成立しなくなるのだが。

 

新しいゲーム

今回のNintendo Switchでは、それらに触覚が加わった。壁にぶつかったということがより現実味を増すのだ*1

 

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だが、Joy-Conの驚異は我々に新たな感覚を提供するだけに止まらない。Nintendo Switchでは、画面を見ずにゲームがプレイできる。その代表的なソフトが1-2-Switchだ。1-2-Switchでは、ゲームの内容がHD振動とモーションIRセンサーでフィードバックされる。それにより、画面を見ずにお互いを見て、ゲームをプレイすることができる。


Wiiでアクティブなゲームをすることができるようになったことは記憶に新しいが、当時はあくまで向かう先はテレビ画面だった。今回のNintendo Switchでは、それがテレビ画面を見ずにできるようになったということだ*2。ゲームの進化はまだまだ終わりが見えない。

 

触覚を再現するということ

これまでの触覚

これまで、コンピュータが付き合ってきた触覚というのは、触られる感覚だった。つまり、人間が触った(入力した)内容をコンピュータが画面やスピーカーに出力していたのだ。タッチパネルやペンタブレットがその最たる例だろう。ペンタブはペンで触ると絵を画面に再現してくれるが、ペンを通じて画面の内容をユーザーに知らせるといった機能はない。まるで触覚と視覚で会話しているようだ。このように、コンピュータはこれまで、触られることはできても、触ることができなかったのだ。

 

新しい触覚

今回の新しい遊びでは、触覚を使った対話ができる。例えば、1-2-Switchに収録されている「ミルク」というゲームでは、Joy-Conを使って牛の乳搾りが体験できる。従来のゲームであれば、ボタンを押すとバイブレーションや音で反応が返ってくるだけだったが、このゲームでは乳搾りの結果が触覚を通じてフィードバックされるそうだ*3。つまり、Joy-Conはミルクを絞ったときの牛の乳首の触感をHD振動で再現しているということになる。


その反応を受けて、プレイヤーは自分の絞り方(触り方)を変えていく。そして、絞られた(触られた)Joy-Con側もさらに別の感覚をプレイヤーに伝える。このように、触覚によるやりとりができるというのがJoy-Conがもたらすコミュニケーションの革新だ。

 

錯覚と再現

現在研究が進められているコンピュータによる触覚の再現は、ものの感触を再現することとものを触っていると錯覚させることの2つを目標にしている。HD振動は後者である。豊かに表現された振動が、人をものを触っている気分にさせている*4。そこにガラスのコップがあるわけではなく、ガラスのコップがあるかのように脳に錯覚させているだけなのだ。


一方、現在の技術では、柔らかさを変えることのできる素材を使って、画面上のモノの柔らかさ・硬さを伝えることもできる。材質を伝えるまで行くとそれは錯覚させる技術になるのだが、ゼリーのように柔らかいとか、ガラスのように硬いといったことは再現可能だ。それを振動により「錯覚させている」のがHD振動なのであって、錯覚と再現どちらがいい悪いというわけではないことも留意するべきだろう。


例:磁気を加えると硬くなる素材「SoftMRF」

www.4gamer.net

 

改めてJoy-Conの魅力とは

Joy-Conは視覚・聴覚に続く第三の感覚・触覚を家庭用ゲームに追加した。その結果、Joy-Conの周辺やJoy-Conの「中」でものが動いているような錯覚を感じることができるようになった。こうした機能は、Joy-Conが触覚で感じ取ったものを触覚でプレイヤーに伝えるというような触るコミュニケーションを促している。これは画面を必要としないぐらい強力なやりとりである。この革新により、ゲームはよりリアルに近づくだろう。

*1:もちろん、バイブレーション機能があるコントローラからは壁にぶつかったことを警告する振動が伝わってくるかもしれない。だが、それはあくまで警告であって、ぶつかった感触ではない。

*2:ただし、結果を参照するために画面を見る必要があり、ソフトを起動するのにも本体(=画面)が必要だ。

*3:本体と同時発売のパーティーゲーム「1-2-Switch」をプレイ。IRカメラやHD振動など,Nintendo Switchならではの機能を使ったミニゲームが楽しめる - 4Gamer.net

『1-2-Switch(ワンツースイッチ)』で乳搾り体験や早撃ち対決などをプレイ、感触がわかる“HD振動機能”も体験してきた【Nintendo Switch プレゼンテーション】 - ファミ通.com

相手の目をみつめてプレイする「1-2-Switch」 - GAME Watch

*4:皮膚に刺激を与えることで、モノを触ったとか、モノにぶつかったということを脳に錯覚させるのが、HD振動の仕組みだと思われる。類似の技術は国立研究開発法人産業技術総合研究所のウェブサイトでも紹介されている。

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