気持ちのサンドバッグ

気になったことを調べて、まとめたり意見を書いたりします。あくまで個人によるエッセイなので、事実関係の確認はご自身でお願いします。

レシピサイトを安全に使うための約束

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Photo via kaboonpics

 

ユーザー投稿型と専門家監修型

レシピサイトには大きく分けて2つある。

  • ユーザーがレシピを投稿して共有するレシピ投稿サイト
  • 専門家がレシピを作成してメディアが掲載するレシピサイト


レシピ投稿サイトは老若男女から人気を集めており、レシピ投稿サイトのレシピを集めた本や投稿レシピを紹介する番組なども存在する。その便利さと手軽さの一方で、レシピに信憑性がないという問題がある。従来はハズレのレシピに遭遇してもおいしくないだけで済んだのだが、今回、はちみつを使った離乳食による小児ボツリヌス症の死亡事例があったことから、レシピ投稿サイトの素人レシピにも注目が集まった。ハズレのレシピによって利用者の命に危険が及ぶかもしれない。


一方、専門のレシピサイトには、プロによって監修された信憑性のあるレシピが載っている。ただし、素人レシピにはないような正規の手続き(下ごしらえ、だしをとるなど)を要求したり、材料に柔軟性がなかったり(というかご家庭になかったり)するので、必ずしも優れているとは言えない。検索などの利便性や料理のバリエーションで言えば、確実にレシピ投稿サイトの方が優れている。このように、レシピ投稿サイトと専門のレシピサイトにはそれぞれ使いやすい部分と使いづらい部分がある。我々料理の素人には、この2つのサイトを賢く使っていくことが求められる。

 

 

 

レシピ投稿サイトの特徴

評価やレビュー

レシピ投稿サイトには、ユーザーがレシピを評価したり、作った感想を投稿したりする機能がある。つまり、評価の良し悪しや感想の内容でレシピの信憑性を測ることができる。ただし、評価が全てではないことは、通販サイトを見ていればわかるはずだ。誰かに依頼して評価・コメントをしてもらっている可能性もあるし、見落とされている欠点があるかもしれない。実験台が多いに越したことはないが、1000人がポジティブな感想を書いているからといって、あなたも同じくポジティブな感想を持つとは限らないことに留意しなければならない。1000人の素人が評価する料理より、1人のプロが作った料理の方が安全な場合もある。

 

プロによる投稿

レシピ投稿サイトに投稿しているプロもいる。それは調理師や管理栄養士などの食の専門家だ。専門のレシピサイトとなると、どうしても料理研究家のレシピが載ってしまうので、こうした分野のプロのレシピが見られるのは投稿サイトならではだと思う。プロの投稿であれば、美味しさや栄養に信頼が持てるはずだ。そして、誤った調理法をしている可能性も低い。ただし、プロといえども良し悪しがあるので、評価は確認しよう。

 

専門のレシピサイトの特徴

根拠のある分量

専門のレシピサイトは、素人が作るレシピに比べて分量が正確だ。権威のあるメディアが全国に発信するので、不味いレシピを掲載するのはまずい。その調味料を入れる根拠(肉を柔らかくするためなど)もしっかり書いてある場合もあり、勝手な代用や不使用による失敗を防ぐことも可能だ。プロの腕(経験)や試行錯誤によって生み出された味は、素人が自分の味覚だけに頼って投稿したものよりも信憑性が高いだろう。カロリーや塩分量の表示があるのもポイントが高い。食べ合わせや食材の選定に関しても、料理のプロが監修している分、信頼感がある。

 

しっかりした料理

専門のレシピサイトは料理の正しい作り方を教えてくれる。例えば、家庭料理では、「我が家ではこれを◯◯と呼んでいる」というものがよくある。だが、うちの◯◯は本物の◯◯とは似ても似つかない別物かもしれない。専門のレシピサイトを使うことで、その◯◯を正規の手順でおいしく、失敗せずに作ることができるのだ。ただし、調味料や加工食品などを販促するために企画されたレシピサイトもあるので、必ずしも栄養バランスに優れたレシピではないことには留意しなければならない。

 

読み手としての注意

勝手にアレンジしない

料理に自信がないならば、勝手にアレンジしないこと。はちみつを誤って離乳食に使おうとする人には、はちみつが味をマイルドにしてくれそうなイメージがあり、あるいは自然の食材で身体によさそうだという偏見があるのではないかと言われている。りんごをすりおろすだけでも十分離乳食になるわけであり、そこに余計な手間をかけてはいけない。これは大人用の料理においても同じだ。余計に手間を加えることで不味くなることもある。やるとしたら、「◯◯を大さじ何杯加えてもおいしいですよ」と書いてあるレシピをその通りに作るぐらいに止めるべきだ。


それから、レシピの中には難しい用語もあるだろうが、わからないことはしっかり調べた方がよい。せっかくレシピでは火の通りやすい切り方にしたのに、指示とは違う切り方をしてしまって火が通らないということがあったら、意味がない。料理は命に関わるものなので、何も知らない人が勝手な想像や配慮で作り変えてはならないのだ。

 

レシピの信憑性を確かめる

掲載されているレシピが正しい(=安全)とは限らない。必ず他サイトの同様のレシピを調べよう。複数のサイトを比較検討した上で、もっとも適切だと思うレシピを使うのがよい。見るべきポイントとしては、プロの監修があるか、詳しい調理法や解説が書かれているか、レビューされているかがある。


前述の「うちではこれを◯◯と呼んでいる」ではないが、素人が作った自称・発酵食品のレシピで健康被害が出ているケースもあるらしい。そうした工程がある場合は、専門家が作った詳しいレシピでなければ絶対にダメだ。痛い目を見たくなければ、市販品や飲食店で本物を味わってほしい。また、明らかに自分には作れないと思う場合は、無理に作ったりせず、諦めた方がよい。指示通りに作れなかった(作らなかった)料理がおいしくなかったり、やり方が不適切でお腹を壊したりした場合はほぼユーザーの責任だと言えるだろう。

 

食材の扱い方が適切か検討する

レシピサイトを参照するときに最も注意しなければならないのは、調理法が安全かどうかだ。特に、レシピ投稿サイトのレシピにおける材料の扱い方は安全とは限らない。なので、肉・魚や毒素のある可能性のある食材の加熱時間が適切か、そもそも食べさせる相手に提供する料理に使用してよいか(年齢・アレルギー等)を考えなければならない。レシピ通りの時間加熱しても肉が生焼けのままだったり、野菜に硬さが残っていたりすることもあるので、レシピを盲信してはダメだ。IHかガスコンロかで火加減は変わってくるし、使う鍋の種類によって熱の伝わり方も変わってくる。特に、IHの人は火加減に注意が求められる。


漬け物類や味を染み込ませる工程がある料理は安全により一層の注意が必要である。中には、常温での放置が食中毒の原因になる食材もあれば、生食自体が好ましくない食材もある*1。特にこれからの季節、梅雨から夏場に差し掛かってくると、食中毒に気をつけなければならない。市販品は不安だから自分で作るという発想ではなく、市販品でも食中毒が起こるのだから、素人のレシピで安全に作れると思わないことが大切だ。

 

ちなみに、今回問題になっているはちみつ入り離乳食の場合は、注意喚起が不十分な投稿が多く見られるので、何歳何ヶ月向けのレシピなのかをよく確認した方がよい。「うちの子は1歳なので、はちみつを使ってみました」などの記述は注意喚起になっていない。そうした場合は、投稿者がはちみつの危険性についてわかっていないことを疑った方がよい。

 

ネット情報は賢く使おう

最後に、レシピサイトに限らず、ネットの情報は賢く使わなければならない。最近はフェイクニュース(嘘のニュース)も話題になっているが、多くの人が賛同・拡散しているからといって正しい情報とは限らない。教養が必要とは言わないので、せめて魅力的な情報を盲信しないだけの能は持つべきだ。

*1:本来生食できないものが、特定の工程を挟むことで生食できるようになるというように書いてあった場合、レシピ自体を疑ってかかるべきだ。