気持ちのサンドバッグ

気になったことを調べて、まとめたり意見を書いたりします。あくまで個人によるエッセイなので、事実関係の確認はご自身でお願いします。

VR(仮想現実)を使えば、遠くにいる人を教育できる

VRを使って遠隔操作するイメージ画像

Photo by Bradley Hook from Pexels

 

医療や学校教育の現場でも使われるITの技術

今や、VR(仮想現実)の名前を知らない人はいないだろう。


VRを使ったゲームは世界中のゲームファンの間で楽しまれている。

それから、VRを使った新技術は連日ニュースになっていて、世界中で展示会が開かれている。

VRはまさに、2010年代を代表する技術であるといえよう。

 

一方で、VRに対してネガティブな意見があるのも事実だ。

人が外に出なくなるのではないか、現実と虚構を混同するようになるのではないかという声も少なくない。

 

そうした声に対する反論として紹介したいのが、「VR社員研修」という可能性である。

VRは不可能を可能にし、人間を進化させる技術であるということを説明したい。

 

 

 

従来の研修は不十分

従来、社員研修は、模型やロールプレイなどで行われてきたはずだ。

しかし、模型による研修は、実際の状況(例えば、飛行機の不時着)に対応できるかという点で限界がある。

 

それだけでなく、社員教育の質と量はときとして、トレードオフの関係になりうる。

マンツーマンにするにはたくさんの指導教官が必要だし、多人数指導では良質の人材を育てられない業種もあるだろう。

 

そこで、リアリティがあり、質と量の両方を担保できる教育方法として提案されたのが、VR研修だ。

 

よりリアルな災害対策

IT(情報技術)といえば、軍事分野から発展することが多い。

米軍でも、学校の銃乱射事件に対応するためのVRソフトを開発した。

 

www.gizmodo.jp

 

もちろん、従来の手段を使っても、銃が乱射されたことを想定して訓練をすることは可能だ。

しかし、それは「負傷者」のゼッケンをつけた人を担架で運ぶなど、リアリティに欠けるものであろう。


現実に近い状況を画面上に再現することで、教員はより実践的な対策を学ぶことができる。

 

「画面に再現された銃乱射事件なんて、絵に描いた餅ではないか」という批判もあるかもしれない。

しかし、プロフェッショナルの監修のもとで作られたVR訓練ソフトは、リアリティがあるはずだ。

それに、情報化社会の現代、困難な状況に関するデータを集めることなどたやすい。

 

いずれにしても、VRは再現が難しい困難に対処するために必要だ。

家にいながら登山をするためだけの技術ではない。

 

遠隔地への指導

もうひとつ注目されているのは、遠隔地を対象とした研修だ。

 

物理的な距離によって技術や教育の質に差が生じているというのは、誰もが憂えていることだろう。

アメリカでは当たり前の技術が、シエラレオネには普及していないかもしれない。

そうした差によって行われる非効率的な業務、あるいは差によって不利益を被る人を減らすことがVRにはできるのだ。

 

例えば、難病の子どもを救うため、海外で治療する費用を募る。そのハードルは低くなるかもしれない。


今、遠隔地に勤務する医者が診療・治療・手術やその指導を行えるような技術の開発が進んでいる。

 

www.gizmodo.jp


触覚を再現する技術の開発も進んでおり、まるで手術室にいるかのような感覚で医師や研修医を指導できるようだ。

将来的には、東京にいながらアメリカの名医の手術を受けることが容易になるだろう。

 

それから、学校教育の分野では、日本の離島や遠隔地に勤務する教師に特別支援教育に関する指導を行うという事例もある。

 

ascii.jp

 

VRを使えば、空間や患者の肉体に没入できる。

通常のビデオではわからなかった細かい部分にも目が行き届くという点で、VRは優れているようだ。


合わせて、どんなに距離が離れていても、同じ水準の教育や手術を施せるという点も評価に値する。

 

同じ指導内容を多くの人に

教え方は十人十色。同じ事柄でもたくさんの教え方がある。

 

それは趣深いことだが、社員への指導では困ったことになる。

不適切な内容が先輩から後輩に伝わったり、逆に伝えるべきことが伝わらなかったりする。

もしかしたら、会社の望まないことが数十年来の慣習になってしまうかもしれない。

 

しかし、同じソフトで多くの人が学ぶVR研修では、指導内容を同じにできる。

「代表にやってもらう」ということもなくなり、誰もが主体的に学べるのが特徴だ。

 

news.mynavi.jp

 

VR研修を導入したセキュリティ会社は、リアリティのある平等な体験を社員に与えられたことに手応えを感じている様子。


この会社の場合はVRを使用しない訓練も併用しているとのことだが、業界によってはVRだけで人材が出来上がるところもあるだろう。

 

VRの研修への導入により、上司の命令に従う封建的な研修は終わりを迎えるようだ。

 

まとめ:VRは行けない場所・できないことの再現

ここまでで紹介したように、VRは手の届かない場所やできないことへのアクセスを可能にする。

 

教育や医療の分野においては、現実と虚構を混同するのではなく、現実をよりよくするために技術が使われている。


現実では難しい実践型の訓練を、VRゴーグルの中で行うことができる。

それから、VRを使えば、普段の職場にいながらにして世界中の人を指導したり、治療したりできる。


家にこもってVRゲームに没頭するだけがVRの使い方ではない。

 

今必要とされている技術にNOを突きつける人は、それこそ現実から目を背けているのではないだろうか?