義務がない平和なバレンタイン
バレンタインデーがあるのは現実だけではない。
スマホ用のアプリゲームでも、女の子がチョコレート(と称したアイテムなど)をくれる。
「アイドルマスターシンデレラガールズスターライトステージ」では、アイドルからチョコレートがもらえる。
好きなキャラクターから本命チョコをもらえることもあり、男性向けのアプリゲームは盛り上がっている。
しかし、「バンドリ!ガールズバンドパーティ」(ガルパ)は少し違うようだ。
配信されたもの
女の子同士でチョコを交換するストーリー
ガルパでは、バレンタインデー限定のストーリーと、バレンタインデー限定のセリフを用意している。
限定ストーリーでは、少女たちがチョコレート交換を行う。
ガルパのプレイヤーはライブハウスのスタッフという設定だが、「彼」の姿はどこにもない。
男に渡すつもりがないメッセージ
メニュー画面ではバレンタインデー限定のメッセージが流れる。
プレイヤーにチョコをくれるつもりの人はひとりもいない。
「◯◯ちゃんにチョコ作ったんだ」と友チョコをプレイヤーに自慢する子がいるが、プレイヤーに渡すつもりは毛頭ない。
- 「トラックいっぱいのチョコが届く日だ」
- 「チョコレート? くれるならもらうわよ」
と言っている子もいる。
「女性だから男性にチョコを渡す」というジェンダーロールは存在しないようだ*1。
手作りチョコを作るイベントストーリー
すでに終了しているイベントのストーリーでは、少女がチョコの作り方を教わる。
友達とのチョコレート交換会を前に、少女はチョコレートを作ろうとするが、失敗する。
ヒントを探すために書店に行ったところ、お菓子作りが得意な先輩に偶然出くわしたのだった。
このストーリーには市販のチョコを購入した少女も登場するが、購入と手作りに優劣をつけていない。
手作りは形が悪くなっても、気持ちがこもっていればよい。
手作りをしただけでも褒めてもらえる。
一方で、市販のチョコにも、買った人の個性が表れていて、無機質なものではないことが示唆されていた。
バンドリはアイドルものではない
ここで、バンドリがどういう作品か振り返ろう。
バンドリ!は少女らが自分たちのためにバンドをやるという作品だ。
1組だけアイドルバンドがいるが、本格派のバンドも2組存在する。(アイドルゲームではない。)
彼女たちがプレイヤーと絡むことは、メモリアルエピソード*2以外ない。
アイドルゲームや恋愛シミュレーションとは一線を画するのだ。
バンドリのすごいところ
義務ではなく自主的に
彼女たちはバレンタインデーに義務を感じていない。
- 「めんどくさいけど作るか」
- 「男性様のために、チョコレートを作る」
のような義務感は一切感じさせない。
日本では化粧やファッションなど、女性が関わる物事が「男性のため」になりがちだ。
職場などでは、男性のためにチョコレートを渡すことが慣習化しているところも多いのではないだろうか?
しかし、バンドリのゲーム内では「渡したいから渡す」ことが前提になっていて、チョコを渡す義務によって苦しんでいる人はほとんどいない。
いつもお世話になっている主人公のために半ば強制的にチョコを作らされているゲームもあるので、すごくよいことだと思う。
女性が渡す必要はない
誰も主人公にチョコをくれないバンドリのバレンタイン。
ゲーム内のセリフから、バレンタインにおける多様性を感じ取ることができる。
- 友達同士でチョコを交換する人
- 大好きな友達のためにチョコを作った人
- チョコを作ろうとして失敗した人
- もらう側の人
- アイドルなのでチョコを渡さずに感謝だけ伝える人
- バレンタインに参加しない人
など、さまざまな人がいる。
世の中には「逆チョコ」なんていう言葉もあるが、愛には正も逆もない。
チョコレートに愛を込める必要すらない。
- 「おいしいチョコがたくさん売られているから食べているだけ」
- 「チョコをみんなで食べるとおいしいから持ち寄っているだけ」
という人もいる。
女性が男性にチョコを渡すというのは、凝り固まったステレオタイプなのだ。
手作りの必要はない
上にも少し書いたが、少女たちのチョコレートは必ずしも手作りではない。
手作りした少女はみんなから褒められるが、購入した人が非難されることはほとんどなかった。
コミュニティの中にチョコレートを手作りしなければならない雰囲気はない。
大好きなお友達のためにガトーショコラを作った子もいるが、それは義務感を感じたからではない。
あくまで自主的にチョコを作っているのだ。
市販のチョコを購入する人は、自分が好きなチョコを買う。
その人の個性が表れていれば、コンビニのチョコであっても構わない。
世の中にはお菓子作りが得意ではないのに、苦しみながらチョコを作っている人もいると思う。
そういう人にこそ、買いチョコのコンセプトを知ってほしい。
おいしいチョコを食べる日でいいじゃん
バンドリでは、バレンタインデーを女性から男性にチョコレートを渡す日にしなかった。
あくまで自主的に、かつ自由にチョコレートを楽しむ日として描写されていた。
今、女性が男性にチョコレートを渡すという文化によって、生きづらさを感じている人もいると思う。
チョコレートを作るのに疲れた人や、誰からもチョコレートをもらえず悔しい思いをしている人もいるはずだ。
そうではなくて、誰もが好きな形でチョコを楽しむイベントになればよいと思う。
いっそのこと、おいしいチョコを食べるだけの日でもいいじゃん。
文化は維持しつつも「負け組」をなくす
これまで通り、好きな人にチョコを渡してもよいが、職場の男性全員にチョコを配らなければならないなどの義務はあるべきではない。
男性が自分にチョコレートを買うことも、「負け組」ではなくバレンタインデーの楽しみ方のひとつとして広まってほしい。