気持ちのサンドバッグ

気になったことを調べて、まとめたり意見を書いたりします。あくまで個人によるエッセイなので、事実関係の確認はご自身でお願いします。

【女性】トランスジェンダーが入学 女子大学のあり方の変化

お茶の水女子大学は多様な女性を受け入れており、トランスジェンダーも含まれる。

Photo by Sharon McCutcheon from Pexels

 

お茶の水女子大学トランスジェンダーの志望者を受け入れ

お茶の水女子大学トランスジェンダーの学生を受け入れることを発表した。

これについては、誤解もあるようなので、この記事で取り扱いたい。

 

お茶の水女子大学は女性として、トランスジェンダー女性を受け入れることを決めたのだ。

 

www.huffingtonpost.jp

 

 

 

受け入れるのは男性ではなく女性

第一に、男性を受け入れるという誤解があるようなので、訂正する。

どの段階にあるトランスジェンダー女性をどう受け入れるのかは執筆時点では明かされていない。


しかし、基本的には自分のことを女性であると感じる人が受け入れられる。

(高校を卒業した人は18歳だと思われるが、現時点でホルモン療法は原則18歳未満には認められていない。)

 

トランスジェンダーと「偽る」人

問題はトランスジェンダーだと偽って入学する人がいるのではないか、という疑念だ。

 

仮に、性別不合(性同一性障害)の診断を捏造(ねつぞう)するなどして、犯罪目的で入学した場合、発覚すれば公文書偽造となるだろう。

万一、偽造を見抜けなかったとしても、学内で犯罪をした人が法の裁きを受けるのは必至だ。

 

そもそも、トランスジェンダーは内面の話であり、当事者たちはそれを外面で表現する。


例えば、受験勉強をしていない人が「お茶の水女子大学を受験したい」と言っても、説得力がない。

でも、もし必死に勉強しているなら、保護者の方も応援してくれるだろう。


それと同じだ。

誰がみても男の格好をしている人が入学することは考えにくい。

仮に、入学してしまったとしても、事に及べば、法の裁きを受ける。

 

受け入れるのは女性を自認する人であって、男性ではない。

仮にトランスジェンダーと偽って入学したとしても、公文書偽造や学内での犯罪が発覚すれば、法的措置を受ける。

 

女性のための教育機関

女子大学は男性差別という誤解

「女子しか入学できない女子大学は男性差別だ」という声を聞くことがある。

少なくとも、日本に女子大学ができた経緯から考えれば、全くの誤解である。

 

女子大学は女性差別的な教育制度を是正する目的で作られた。

Photo via pixabay

 

戦前の教育制度では、女子は男子と異なる教育制度になっており、女子の高等教育が大きく制限されていた。

戦後、その方針は改められ、女子大学が設けられることとなった。

 

男女間ニ於ケル教育ノ機会均等及教育内容ノ平準化並ニ男女ノ相互尊重ノ風ヲ促進スルコトヲ目途トシテ女子教育ノ刷新ヲ図ラントス

女子教育刷新要綱 | 政治・法律・行政 | 国立国会図書館

  

つまり、国は

  • 男女が平等に教育を受けられるようにします。
  • 男女で教育の内容に差や違いが出ないようにします。
  • 男女が互いを大切にできるよう促します。

という方針を打ち出した。

 

「女子大学を新たに作りましょう」というよりは、既存の女子の教育機関を男子の教育機関と同等に扱い、男子大学に女子の入学を許可した形だ。

 

もちろん、「女子の教育をしましょう」という目的で戦前に立ち上げられた学校もあった。

でも、女子大学という枠組み自体は、女子の教育水準の底上げを図って作られたといえる。

 

参考: 

一 終戦直後の高等教育:文部科学省

 

女子大学の人気低迷と役割の変化

トランスジェンダーが受け入れられたのは、女子大の人気低迷という事情も大きく関係している。

 

男女間の教育「制度」の平等化という戦後の目的は、おおよそ果たされた。

共学校でも女子を受け入れる土壌が出来てきていることから、女子大自体への需要がやや弱まっている*1


時代の移り変わりを受けて、一部の大学では短大廃止や男女共学に移行する動きもある。

 

他方、「良妻賢母」の育成ではなく、女性について研究したり、リーダーの女性を育成したりするという方針の大学もある。

それから、世間ではセクハラ・マタハラも横行しており、女性の人権が確立されたとは言いがたい。

女性のための教育・研究機関はまだ必要とされているのだ*2

 

そうした流れの中で、トランスジェンダー女性を受け入れるというのは必然だったのだろう。

 

トランスジェンダーを女性として包摂

実際のところ、お茶の水女子大学トランスジェンダーという存在に対して、一定の理解を示している。

 

世界では今でも多くの女性が不当な扱いを受けており、その中にトランスジェンダーの女性も含まれる。

多様な「女性」が学ぶ場という方針を打ち出しているお茶の水女子大学は、トランスジェンダーを受け入れることを決めた。

ちなみに、トランスジェンダー男性(戸籍上は女性で、性自認が男性の人)も受け入れるとのこと。

 

トイレ・更衣室などの設備の利用については、具体的な言及はなかった。

大学側によれば、学生や学内関係者には受け入れられているようだが、反面、海外の女子大学への留学が難しい現状もある。

受け入れのための具体的なプロセスはこれから考えていくとのことで、課題は山積みだ。

 

そもそも、女子大学は戦後、不当に制限されていた女子教育を底上げするために作られた。

しかし、その役割は果たされ、役割が変わってきている。

トランスジェンダー女性が受け入れられるのも、女性の地位向上のため。

 

これは男女間の対立ではない

今回の件について、不満を持っている人もいるだろう。

 

「女性のためのシェルターに『男性』が入るのはおかしい」

「男性も差別されているのではないか?」

 

これはおそらく男性と女性の対立構造ではない。

多くの人間が、自分の性別がおかれている状況に満足していないのだと思う。

 

女性が弱い間は女子大はなくならないだろうし、男性も自分がつながれている見えない鎖に気づく必要がある。

女子大をなくすための最短ルートは、性別に関するバリアを全て取り払うことであろう。

*1:女子大はなぜ凋落したのか、25年で偏差値最高74から65へ | 今週の週刊ダイヤモンド ここが見どころ | ダイヤモンド・オンライン

*2:お茶の水女子大学はその名前に似合わず国立大学だ。現状を踏まえると、国として女子大学を残しておくことは必要なのだろう。