気持ちのサンドバッグ

気になったことを調べて、まとめたり意見を書いたりします。あくまで個人によるエッセイなので、事実関係の確認はご自身でお願いします。

【災害】非難される現場社員 彼らに責任はあるのか?

現場で働く社員・店員には責任はほとんどない。怒るのはおかしい。

Photo via pixabay

 

北海道や大阪で相次ぐクレーム 同じ被災者なのに

台風21号と北海道胆振東部地震の復旧・復興が急ピッチで進められる中、ネット上で一部の人の不満が書き込まれている。

復旧・復興の最前線で働く人々だ。

 

コンビニの店員や、事務所の窓口の派遣社員などが批判の矢面に立っている。

だが、批判すべきは別の人ではないか?

というか、災害が起きたことに責任は生じるのか?

 

 

 

 

災害が起きたこと自体は誰も悪くない

災害自体はたまたま運悪く起きたことだ。

 

でも、防げるはずの被害が防げなかったのであれば、現場に指示を出している責任者が悪い。

復旧・復興が遅いのも、誰の責任でもないか、責任者が悪い。

 

長い避難生活でストレスがたまっているのはわかるが、現場の社員・職員にはほとんど責任がない。

それに、彼らも同じ被災者である*1

その点をわかってほしい。

 

災害が起きたことへの責任は誰にもない。

しかし、前と同じ被害が繰り返されたのなら、責任者を責めるべきだ。

一方で、現場の社員も被災者であることを忘れてはならない。

 

「自分は素人」という視点も大事

復旧・復興のプロは困難な状況で頑張っている。

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災害の復旧・復興に当たっているのはプロだ。

一方で、あなた方の多くはプロではない。

 

プロにしかできないこと・わからないこともある。

それを知らずに、外野が騒ぎ立てるのはいかがなものか。

わたしたちは何もできないのだから、プロに委ねるべきではないか?

 

百歩譲って、他の企業が10分でできるであろうことを丸1日かけてやっていたら、さすがに怒ってもよいと思う。

ただ、物理的に不可能・困難な状況でそれを迫るのは問題がある。

 

困難な状況で怒るな

困難な状況とは何か?

それは、道路の寸断や設備の損傷などのやむを得ない事情だ。

 

北海道で実際に起こっているのは、物流の停滞である。

10日時点で高速道路の通行止めは北海道全域で解消しているが、道道の多くが復旧していない*2

もちろん、貨物列車にも影響が出ている。

 

「どうして食料がないんだ?」

「ガソリンが品切れとはどういうことだ?」

 

それを店員に言っても仕方のないことだ。

自治体の土木課や各交通機関に、できる範囲でお願いしていくのが筋だと思う。

 

プロではない一般市民に、復旧・復興に携わっているプロを怒鳴る資格はない。

復旧を阻んでいる困難な状況もあるので、できる範囲でお願いしていくことが大事だ。

 

早期再開は日頃の準備のおかげ

ライフラインのいち早い復旧はわたしたちが生きるために必要だ。

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とはいえ、一部の企業が早期に営業を再開したり、設備の復旧を終わらせている。

 

被災地のかたは、他の企業もそうすべきだと思うかもしれない。

しかし、これは周到な予防策やマニュアル、訓練があってのことだ。

 

特に、北海道のコンビニチェーン・セイコーマートは、もともと車から電源を取れるようにしてあった*3

それに、災害時の食料の提供に関して、北海道庁と提携もしている*4

 

災害が起きてしまった今、急に早期再開を求めるのは酷である。

最大震度7の地震と大停電を想定できていなかったのは、あなたも同じではないか?

 

政府が無理強いをしているのでは?

大阪や北海道の一部の設備が早期に復旧していることについて、「政府が現場に無理強いしている」という意見が目立つ。

 

特に、交通機関が1-2日で復旧していることに対して、そういう声が聞かれる。

 

なるほど、労働者の視点に立てば、労働者をこき使っているように見える。

しかし、これは経済を動かすために、必要なことだ。

 

空路や鉄道が動かないと、経済に大打撃を与える。

それに、帰宅困難者は、現地の避難所を利用せずに72時間以内に帰ってもらう想定である。


停電や断水も、生活が不便になるだけではない。

酪農家が保存できなくなった牛乳を廃棄している*5

救急患者の受け入れや外来の診療ができない病院も大量に発生した。

 

ライフラインやインフラは、「ゆっくり直していこう」というわけにはいかないのだ。

 

早期に営業を再開した店や復旧した施設は事前の周到な準備があってのことだ。

交通機関などの復旧は、政府が無理強いをしているようにみえるが、被災者の生活のために必要だ。

 

頑張っている人たちに感謝の気持ちを

被災者の皆さんが頑張っていることは知っている。

でも、頑張っているのは避難生活を支える人たち、復旧・復興に携わっている人たちも同じだ。

 

コンビニ・スーパーやガソリンスタンドも、入荷が少ない中で頑張っている。


復旧作業は、民間業者があなたの生活のために必要だからやっている。

インフラが復旧しなければ、経済だけでなく、生活の広範囲に影響が出る。

 

自衛隊や自治体職員がいなければ、あなたは避難生活はおろか、給水すら受けることができない。

クレームをする前に、感謝の気持ちを忘れないようにしてほしい。

*1:北海道で動いている自衛隊の一部も、北海道の駐屯地から派遣されている。

参考:防衛省・自衛隊:平成30年北海道胆振東部地震について(JSDF's Response to the Earthquake in Hokkaido)

*2:北海道地区 道路情報

道道は県道の北海道版。9/10(月)14:50閲覧時点で、道道の64路線85区間が通行止めだった。

*3:参考:北海道の停電 地元コンビニ「セイコーマート」が車から電力供給して営業 広報「コードを常備している」 - ねとらぼ

*4:参考:1-050(株)セコマとの包括連携協定 | 総合政策部知事室広報広聴課

*5:搾乳できた農家では1000トン以上の生乳が廃棄され、搾乳ができなかった農家では乳房炎で死んだ牛がいる。

参考:地震の停電 酪農に打撃 搾乳できず乳牛死亡 北海道 標茶町 | NHKニュース