気持ちのサンドバッグ

気になったことを調べて、まとめたり意見を書いたりします。あくまで個人によるエッセイなので、事実関係の確認はご自身でお願いします。

【映画】初週の興行収入を上回る 当然では?

SNSの影響で、初週よりも後で興行収入が伸びる映画が増えている。

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Twitterで話題になるケースも

第2週以降の興行収入が第1週を上回る映画が増えている。

 

これは映画の出来というよりも、TwitterなどのSNSの影響が大きい。

ネット世代の映画の見方が、時間差でのヒットやリピーター需要を生み出しているのだ。

 

 

 

 

上の世代:映画の体験が主

上の世代(非ネット世代)は映画を見るだけで、ほとんどの目的を達成する。

 

昔は、テレビや紙媒体から映画の情報を得て、封切りになったら見に行った。

映画の体験それ自体が目的であり、副次的に会話が発生する。

初週以降、映画は盛り下がっていく。

 

ネット世代:映画の体験の共有が主

ネット世代は、映画の体験を他のSNSユーザーと共有することに喜びを感じる。

 

彼らはSNSで映画の情報を得る。

気になる映画があれば、いつであっても見に行く。

映画の話題に乗ることを目的にし、自分も映画の感想や印象に残ったセリフを書き込む。

 

その投稿を見た人が映画を見に行く。

結果として、公開から時間が経つにつれて、観客動員数が増える。

また、ブームが再発する。

 

SNS特有の映画体験

ネット世代にウケた映画が第2週以降も勢いを落とさない(または2週目以降にヒットする)秘密は、SNSの特徴にある。

 

ネタバレを食らう前に・話題に乗り遅れる前に

SNSには毎秒、映画の話題が投稿される。

公開から時間が経つにつれて、ネタバレを見るリスクが上がる。

 

それに加え、映画のセリフや一部の感想が、知っていて当然の決まり文句(インターネット・ミーム)になる場合がある*1

流行に乗り遅れないためにも、映画を見る必要があるのだ。

 

映画をアトラクションとして体験する

「映画を見て衝撃を受けた」

そういう経験はあるだろうか?

 

SNSでは、そうした感想が毎日流れてくる。

衝撃を受けたという投稿がSNS上にこだまし、「さぞ面白い映画なのだろう」と観客が殺到する。

 

話題になる映画には物語というより、アトラクションとして楽しまれているものもある。

例えば、登場人物がある発言をすることがアトラクションの仕掛けとして捉えられている。

 

製作者にとって、工夫を凝らした演出を「衝撃」の一言で片付けられてしまうのは不本意かもしれない。

だが、それがネット上で話題になる映画の一条件になっている。

 

同じ映画を複数回見る

これに関連してくるのが、発声可能上映の存在だ。

合いの手を入れてよい上映のために、映画をもう一度見たいという人がいる。


それから、水が噴き出したり、座席が揺れたりする4D上映も人気がある。

 

以前であれば、「1人で見たが友達とも見る」とか、重度の映画オタクが何度も見るというパターンが多かっただろう。

でも、今はSNSの感想を受けて再鑑賞する人や、SNSで報告された合いの手を言いにいく人も多い。


彼らは再鑑賞の中で新たな感想を持つようになり、SNSに書き込む。

それを見た人が初鑑賞・再鑑賞しに行く。

 

このように、SNSは映画の世界を拡張し、興行収入を伸ばしていく。

 

SNSの流行についていくためにも、話題の映画を見る必要がある。そうしないと、ネタバレを食らうリスクが高まっていく。

衝撃を受けたという感想や衝撃的な場面の説明が、観客動員やリピーターにつながる場合もある。

発声可能上映や4D上映などの新たな上映の形態も、リピーター需要の要因である。

 

SNSのデメリット

マイナスの意見も広まってしまう

とはいえ、SNSは万能ではない。

 

例えば、1人の酷評が1万人に拡散され、駄作のレッテルを貼られる恐れもある。

映画は無料ではないので、少しでも悪評があれば、消費者が足踏みしてしまう。

 

今でも、映画館に来てから見る映画を決める人はいるだろう。

だが、ネット世代はSNSや映画館のウェブサイトからスタートするため、見ないという選択をとりやすい。

 

今の時代、映画との偶然の出会いは難しいのかもしれない。

 

解釈が固定されてしまう

SNSは多様だったはずの映画の解釈を画一化させるおそれがある。

シェア数の多い感想が正義とみなされるためだ。

 

現在でも、映画の専門家や専門誌はさまざまな解釈・評価をしている。

そこに正解はない。

だからこそ、ある映画祭で評価されなかった映画が別の映画祭では賞をとったりする。

 

例えば、ある映画を嘲笑する人がいても、それは多様な解釈のひとつとみなされる。

しかし、それがシェア数の多い意見になったらどうだろう?

題材と真剣に向き合ったスタッフやその他の観客の想いが踏みにじられるかもしれない。

 

通販サイトのレビューのように、さまざまな方向性の意見が一覧できるとよいと思う。

 

SNS映えする映画が増える心配

SNS映えを前提とした映画が増える可能性がある。

つまり、感情の機微とか繊細な表現ではなく、インパクトのある表現やセリフが重視されていくかもしれない。

 

コメディ映画を否定するつもりはない。

でも、ダイナミックな作品ばかりになったら、芸術としての映画界は潰れるだろう。

 

繊細な映画も、従来の映画好きや上の世代には評価される。

SNSウケしない映画も作り続けることが求められている。

 

悪評が広まれば、駄作だという先入観ができてしまう。

SNSで支持を得た意見が正しい解釈とみなされる。

インパクト重視の作品が増えるかもしれない。

 

映画館・配給会社はネットをよく見て

映画を売る側は、ネットを注視しなければならない。

 

一部の映画館はネットの評判を受けて、特別な上映を増やしたり、急きょ上映を決めたりしている。

発声可能上映に積極的な映画館では、グッズを貸し出している場合もある。

 

逆に、2週目以降に盛り上がりはじめた映画の上映を、打ち切ってしまっている映画館もある。

話題になってから、再上映を行うケースもあるようだ。

 

シネコン業界においては、近いうちに従来の常識がほとんど通用しなくなる。

せっかくのリピーター需要を逃してはいけない。

*1:昔でいうE.T.とかタイタニックごっこがネット上で行われていると思ってもらえればよい。