気持ちのサンドバッグ

気になったことを調べて、まとめたり意見を書いたりします。あくまで個人によるエッセイなので、事実関係の確認はご自身でお願いします。

利便性と危険:誤用・想定外の使い方で死亡事故も

知床観光船 人為的な穴を開けていたと発覚

北海道・知床で沈没した観光船が引き揚げられた。

その結果、船内(客室の下)の壁に、本来開けるべきではなかった穴が開いていたと判明した。

これは人為的なもので、沈没の要因のひとつになった可能性がある。

 

もしかしたら、メンテナンスの効率化のために、そのような穴を開けたのかもしれない。

その穴が事故につながったのだとしたら、とても残念だ。

 

しかし、この業者を笑えない。

世界には、誤った使い方・想定外の使い方によって起こる事故も多い。

危険なモノの使い方をしている人は、今すぐやめたほうがよい。

 

この記事では、そうした使い方によって起こった悲劇を紹介していく。

 

 

 

 

安全装置の無効化:機械式立体駐車場の事故

車両を台の上に乗せて駐車する昇降式の駐車場。

そこでの死亡事故は、非常に重要な教訓を示している。

安全のために、あえて操作が面倒になっている機械もあるということだ。

 

ある駐車場の昇降機は安全のため、ボタンを押している間しか動かない仕様だった。

しかし、実際には、ボタンを押しっぱなしにする特殊な器具が使われていた。


その結果、昇降機に侵入した子どもが挟まれて、死亡した。

手で押していれば、防げたかもしれない事故だった。

 

同様の事例に、除雪機での死亡事故がある。

除雪機は安全装置(デッドマンクラッチ)を握っていないと、動かない。

つまり、安全装置から手を離すと、すぐに停止する。

 

この安全装置を固定すれば、完全自動にできる。

だが、そうすると手を離しても止まらないため、人が除雪機に巻き込まれて死亡するおそれがある。

安全装置を無効化するのは、人類の叡智(えいち)ではなく、浅知恵といえよう。

 

参考:

機械式立体駐車場での事故に御注意ください!

「いつも使っているから大丈夫」――本当ですか? 機械式立体駐車場に潜む危険にご注意を! | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン

除雪機「1.デッドマンクラッチを無効化した誤使用」 | 製品安全 | 製品評価技術基盤機構

除雪機の使用時の事故に注意しましょう! -デッドマンクラッチ(安全装置)の無効化による事故が目立ちます-

 

誤飲:飲み物の容器に薬品を入れた事故も

「便利なので、機械用の油を調味料の容器に入れて使っている。」

このような生活の知恵に関するツイートが物議を醸している。

非常に危険な使い方だからだ。

 

食べ物・飲み物が入る容器に、食べてはいけないものを入れると、誤飲のおそれがある。

2022年のスポーツ大会では、ペットボトルに入れた消毒液を誤って提供し、飲んだ選手が棄権した。

他にも、有機溶剤や漂白剤をうっかり飲んでしまった事例が報告されている。

 

気をつけたいのは、うっかり食べて・飲んでしまう事故が多い点。

どんなに注意しても、起こるときには起こる。


「食べ物・飲み物と間違えないよう心がける」ではない。

「最初から容器の使用を避けるべき」だ。

 

参考:

ペットボトルなどの飲料・食品容器への移し替えによる事故 | 一般の皆さま | 公益財団法人 日本中毒情報センター

職場のあんぜんサイト:労働災害事例

 

脚立の誤使用 生存は保証できない

家具・工具は、一定の安全基準や自主規制によって、安全性が保たれている。

これは、想定外の使い方をしたときに、安全性を保証するものではない。

 

2022年5月、ある巨大アートの設営現場がネットで公開され、炎上した。

原因は、土木業界から見て、作業風景があまりにも危険だったからだ。

中でも、脚立の使い方が強く非難されていた。

 

脚立からの転落事故はあとを絶たない。

今回のアートの設営作業は、運よく事故がなかっただけといえる。


脚立を使用するまともな業者は、安全な使い方を心がけている。

  • ヘルメットを着用する
  • 天板を跨がない
  • 天板の上に乗らない
  • 下で補助員が支える

など。

 

残念ながら、危険な使い方をした人が転落しても、生存が保証できない。

業者にはそもそも、転落しないような対策が求められている。

(脚立ではなく足場を組む、ハーネスをつけるなど。)


参考:

はしごや脚立からの墜落・転落災害をなくしましょう! | 東京労働局

脚立作業中の転落災害と作業姿勢の関わりについて | 労働安全衛生総合研究所

 

急がば回れ 命が最優先

利便性を優先して、命を危険にさらす事故のニュースを見るのは虚しい。

避けられたかもしれない事故だからだ。

 

作業の効率化に大切なのは、工程の省略ではない。

「急がば回れ」

より賢いやり方を、じっくり考えることである。

 

  • 消毒液をペットボトルに入れるのではなく、(安価な)容器を購入する。
  • 安定した足場を用意し、高所でも作業をしやすくする。

 

目先の損得ではなく、中長期的な視野(どのような結果をもたらすか)を持つことが求められている。