身勝手な正義 フォロワーから金集めて裁判も
一言で表すなら、インフルエンサーは情報を広める仕事だ。
コスメやおもちゃ、テーマパークなどのさまざまな商品やサービスを広める。
料理や整理整頓の仕方などのライフスタイルを発信するのも、インフルエンサーの一種である。
そうしたインフルエンサーの中でも、事件やスキャンダルなどの情報を伝える人たちが、いま問題になっている。
彼らは人々に悪い意味で行動を促したり、お金を払わせたりする。
インフルエンサーの話を信じ込んだ結果、被害を受けている人もいるようだ。
ネット上での彼らの影響力は大きいが、彼らの情報を鵜呑みにしてはいけない。
インフルエンサーの問題をまとめる。
インフルエンサーはアイドル以上の存在に
全体的に、インフルエンサーは、アイドル以上の存在になっていることを前置きしておきたい。
その人の出す情報だけでなく、その人自身を好きになる人も多い。
動画への投げ銭は、まさに人を好きになっている証拠だ。
あるインフルエンサーは、歌手ではないが、自分の曲を出している。
それから、好きなインフルエンサーのメイクや整理整頓術を真似するという人も多い。
生活情報番組に出ている専門家と、芸能人のよいとこ取りのようなインフルエンサーもいるのだ。
でも、これが政治や事件を扱うインフルエンサーになると、危うくなる。
「Aさんの政治思想や歴史観が好き」
「悪と戦うBさんを応援したい」
悪質なインフルエンサーを好きになってしまう人は後を絶たない。
従来のニュース番組の伝え方
インフルエンサーの情報をニュースの一種と捉えている人もいるようだが、実際は大きく異なる。
テレビのニュース番組は、いつも時間をとって事件や社会問題を特集している。
その中には、視聴者の告発 (身の回りで事件や問題があったという情報) も含まれる。
番組では、次のように情報が伝えられる。
これが自社のニュースサイトに転載されたりする。
テレビ局以外のニュース記事でも同様だ。
- 視聴者が提供した情報を元に、取材をする。取材の結果、わかったことを伝える。
- 相談した人の名前は、その人が希望した場合だけ出す。それ以外ではAさんとか、被害男性などと呼ばれることが多い。
- 「○○県内の私立高校」「男性教師」のように、問題を疑われている人が誰なのか、わからない伝え方をする。
- 「疑惑」(悪いことをした疑いがある) という言い方をして、「事件」などと断定しない。
- 相手の言い分や専門家の話も伝える。
- 問題を防ぐ方法や被害にあった場合の対処法のように、視聴者のためになる内容も扱う。
- 時間があれば、レギュラー出演者がコメントする。
断言しない モヤモヤする場面も
ニュース番組はワルモノを懲らしめるためのものではない。
事件や疑惑について、その事実を伝えるのが目的だ。
「悪いことをした」とズバッと言わないので、モヤモヤした気持ちになる人もいる。
ネット上では、「犯人の顔を出さないのはおかしい」との声も聞かれる。
視聴者が勝手に犯人を決めつけて、問題になるケースもあった。
(地図アプリなどから疑惑の企業をA社と断定したが、実際にはA社ではなかった例も。)
番組ではときどき、「警察が事件として扱うのは難しい」といったネガティブな結論も出される。
報道ができるのは、現状を変えようと呼びかけることだけである。
悪質インフルエンサーの伝え方
悪質なインフルエンサーは、事実を伝えるというよりも、衝撃的な内容でフォロワーを増やそうとしている。
以前はまとめブログにTwitterやコミュニティサイトの投稿をまとめる人が多かった。
最近はブログを持たず、直接Twitterに投稿するインフルエンサーが増えている。
以下、Twitterを前提に、インフルエンサーの情報発信の方法をまとめる。
- SNSなどに集まった情報をそのまま発信する。インフルエンサー個人の想像が含まれる場合も。
- 「○○県の××高校」などと名前を出す。場合によっては、犯人のSNSアカウントだと断定してIDを掲載する。
- 「女さん」「○○主義者」などと悪意あるレッテル貼りをする。
- 「××してしまう」と断定する。
- 相談した人の話を一方的に伝える。
インフルエンサー個人の考えが強く反映される。
ときには、一般に良いと考えられることを、悪いことのように仕立てあげている。
テレビなどのマスコミであれば、情報が本当に正しいか、慎重に調べる。
それに対し、インフルエンサーは「証拠を見つけた」などと、軽い気持ちで投稿してしまう。
一部は偽情報や、注目を集めるための悪ふざけの投稿を転載してしまっている。
情報がウソだった場合、投稿をシェアした人にも責任がある。
とくに人の信用を失わせる投稿は、シェアする前によく考えよう。
敵を設定 正義と称して争う
インフルエンサーは、悪事をしている疑いのある人を敵とみなして、徹底的に攻撃する。
人々に「自分は正義で相手は悪だ」と信じ込ませて、応援させる。
例えば、A議員が不正をしている疑いがあるとしよう。
インフルエンサーは不正の証拠だけでなく、A議員の悪口も投稿する。
「A議員は○○主義者だ」とレッテルを貼ったりして、悪の一味のメンバーであるかのように演出する。
(場合によっては「Aはこんなに気持ち悪い」などの小学生のような悪口も。)
「A議員と裁判で争うのでお金が必要だ」といって、応援する人に払わせようとする。
そのお金は応援する人には返ってこない。
ニュースではA議員が不正を認め、しかるべき処分を受けたら、一件落着となる。
でも、インフルエンサーはA議員の関係者やA議員に賛成する人にまで、攻撃を拡大する。
自分を批判する人や、都合の悪い人は誰でも攻撃の標的になりうる。
反論した専門家は敵
悪質なインフルエンサーは、自分の意見を否定した専門家をも敵扱いする。
とはいえ、知識や議論では専門家に勝てない。
大人げない悪口やレッテル貼りが主な攻撃手段となる。
ちなみに、ニュース番組では、鬼の首を取ったように専門家を批判することは少ない。
「専門家Aは○○と主張する。しかし、専門家Bは××と主張する」と複数の主張を並べる。
どちらの主張が正しいか、決めつけないことが多い。
省庁などに取材し、その省庁を批判する場合はある。
その際の批判の矛先は、基本的に省庁や政府であって、取材に応じた担当者ではない。
無論、相手の考え方を批判する行為は正当だ。
一方で、意見が違う人そのものへの攻撃は、正当な批判とはいえない。
インフルエンサーに訴訟費用をあげないで
人の悪口を書いた疑いなどで、インフルエンサーが訴えられる場合もある。
その際に、よく「スラップ訴訟を受けた」という言葉が使われる。
スラップ訴訟は、相手を怖がらせ、黙らせるために裁判を起こすことを意味する。
これにより、権力者は自分への批判を封じることができる。
つまり、インフルエンサーは「自分の正しい主張が封殺されている」というのだ。
本当にスラップ訴訟の場合もあるが、残念ながら、多くは正当な理由のある訴訟である。
被害者のように振る舞っていても、実は加害者かもしれない。
中には、「裁判の費用は発生しないのでは」と指摘されたケースもある。
お金を払うかどうかは慎重に判断してほしい。
事例:ブログ読者が裁判で負ける
以前あるブログが読者に行動を呼びかけ、その結果、読者が訴えられた事件があった。
何人かの読者は、お詫びのお金を払うよう、裁判所に命令されている。
事件の経緯は以下の通りである。
当時、ある弁護士の団体が政府の政策に反対していた。
一方、その政策に賛成するブログは、弁護士をクビにするお願いを出すよう、読者に呼びかけた。
だが、お願いの手紙を出された弁護士の中には、この件と関係ない人もいた。
その弁護士たちは、ブログや読者の勝手な勘違いによって、信用を失った。
読者が訴えられたのは、残念ながら妥当だった。
何が正しく、何が間違っているかは自分で考えよう。
「インフルエンサーが言っているから正しい」と思っていたら、この事件の読者のようになる。
過激な投稿 タイムラインから一掃を
悪質なインフルエンサーの投稿は、タイムラインから消してしまうのが一番だ。
人の悪口を投稿するようなインフルエンサーは、ブロックしよう。
そのような情報をシェアするフォロワーも、できればブロックしたい。
波風を立たせたくない場合は、
- ミュート (相手の投稿を見えなくする)
- ブロ解 (1度ブロックして、ブロックを解除する。すると、お互いのフォローが外れる。)
をおすすめする。
ソーシャルメディアのタイムラインは、自分の見たい情報だけで構成できる。
たしかに、情報が偏るというのはリスクだ。
しかし、低俗で有害な情報を見せられるのも、十分に大きなリスクである。
悪質な情報を流す人は、思い切ってブロックしよう。