今の時代に求められている英会話
英語の授業では、英語のあらゆる形や時制が使えるように、様々な内容の文を書いたり、様々なことを話したりする。
でも今の時代、英語を学ぶにも気を使わなければならなくなっている。
「彼は男です」
LGBTが地位を確立し始めている今、「あの人は女性です」「この人は男性です」という風に、他人の性別を断定するような表現は適切ではない。
そもそも、主語を省略する文化のない英語では、第三者について話すときに、代名詞HeかSheを使わなければならない。
最近はTheyで代用するケースも増えてきているようだ。
しかし、日本の英語教育の現場では少なくとも、人称や単数・複数の概念を理解していないとしてバッテンを食らうだろう。
相手のジェンダーに配慮して"They are a student."などと言った日には、バカだと思われてしまう。
また、外来語から来ている男性形・女性形がある名詞も、別の単語に置き換えられている(eg: stewardess→flight attendant)。
「あなたの家族を紹介してください」
最近は自分の家族を教えて欲しいと言われて困惑する人が多いと思う。
家族というのは配慮が必要な話題だ。
絶縁や死別、離婚により家族が減り、あるいは、再婚により血の繋がっていない家族が増えることもある。
だが未だに外国語会話の授業では、家族についての説明を求めることがある。
たしかに、英語の場合、家族の紹介にはBe動詞や一般動詞、There is/are構文など様々な文法が使える。
家族の職業を説明するのに、様々な名詞を学ぶこともできる。
だが現実には、様々な事情がある。
例えば、精神的な病気によって仕事ができなくなっている人や仕事の内容を家族にすら詳しく話せない人だっている。
あるいは、家族の死にトラウマを抱えているという人もいる。
そういう人を家族に持つ人に対して、家族について問うのは酷である。
「ユウは赤い服を着ています」
色覚に異常がある場合、絵だけ見て色を判断することが難しい場合がある。
例えば、教科書では、色の名前を最初から書いているなど、配慮がされているはずだ。
一方で、現実にいる人々の服の色を瞬時に判断するのは難しいと思う。
同様に、「馬鹿」だからではなく、右と左がわからない、時計が読めないという人もいる。
無理に人を指名して、答えを要求するのは避けたほうがいいかもしれない。
「出身はどちらですか?あなたの電話番号はなんですか?」
出身や住んでいる場所のことを訊かれるケースはよくあると思う。
でも、答えられないという人もいるだろう。
差別や迫害を避けるために出身を伏せたい人もいるだろうし、血縁関係のないきょうだい同士で出身が違うこともありうる。
中には、外国で生まれたが、幼少期に引っ越したので、故郷を説明できないという人もいるだろう。
筆者の場合は、同郷出身の両親が東京にやってきて産んだ子どもなので、東京出身かといえば疑問が残る。
このように、複雑な家庭事情やアイデンティティの意識の曖昧さから出身地が説明できない人は多いはずだ。
そういう人のために、英語や英会話の授業では出身地は訊かないのが賢明だろう。
電話番号も現代の最新技術のもとではセンシティブな情報だ。
おそらく英会話の教科書では、練習のための架空の電話番号が掲載されている場合が多いはずである。
その他のオリジナル教材でも同様だと思う。
だが稀に、自分の電話番号を言えというパターンがある。
今の時代、自分の携帯の電話番号を言えば、SNSのアカウントが割られてしまう可能性があり、大変危険だ*1。
電話番号が持つ重要性を認識し、本当の電話番号を言わせないよう、工夫してほしい。
言いたいことが言えない、とマイナスに捉える人もいるかもしれないが、むしろ、言いたいことを言えないのは、英語の授業で不快な思いをしている人だということに気づいてほしい。
*1:検索できないよう設定しない方が悪いとは言わない。誰もが機械をほしいままに操れるわけではない。