誤情報を発信しないためにできること
某テレビ局が最近、誤報を2回出した。
いずれもネット情報をソース(出典)にしたと見られ、お笑いのネタとして書き込まれたものを真に受けている。
騙されるとは愚かだとも言える。
とはいえ、自分たちが騙されないかと言われれば、首を縦に振ることはできない。
Twitterの人気ツイートを見ると、デマであることを指摘するリプライ(返信)が付いていることもある。
100-1000人がリツイートしているとなると、本当と思ってしまうのも仕方ない。
それに、人気であることが脳内で先行して、指摘を見逃す人もいるかもしれない。
デマや盗作を指摘されてもなお、100以上のリツイートがついたままという場合もある。
このような現状を鑑みて、我々は嘘を見抜く術を身につけなければならないと私は考える。
観察眼を持つ
事実と脚色を区別する
我々は嘘を見抜く観察眼を持つべきだ。
発言から脚色を取り除く行為がそのひとつである。
それはつまり、発信者の属性を考慮して、発信者自身に、または紹介している物品の売り手に有利な情報を書いていないか検討することだ。
例えば、カメラを売っている人が「うちのカメラは不良品です」と言うはずがない。
優良品であることを読者に認識させないと、買ってはもらえないからだ。
本当に優良品なのかどうかは、カメラの専門家などから裏付けを取る必要がある。
逆に、その会社のカメラに批判的な人に「ここのカメラはすごいです」というコメントは出せない。
だから、その会社の支援者、またはお金をもらった専門家がコメントをしている場合もある。
あるいは、取材をした記者が恣意的に発言を切り取っている可能性もある。
なので、記事内の専門家のコメントはある程度の脚色があることを想定すべきだ。
このように、書き手やその支援者にとって有利な情報が含まれている場合もあるので、気をつけなければならない。
発言の背景にある悪意を見抜く
ネットの発言の背景に、見え透いた悪意がある場合もある。
例えば、差別用語が含まれていたり、文体的に(弱者に対する)何らかの皮肉が込められているかもしれない。
そういうとき、我々ができるのは真に受けることではなく、触れずに無視することである。
SNS上の差別的な発言をシェアしてしまっては発言者の思う壺なので、シェアに貢献する形で言及するのは逆効果だ。
「◯◯のツイート読みました。ひどいですね。」のように、間接的にほのめかすべきである。
悪意と誤情報が絡み合った悪質なデマの代表例が「犯人は◯◯人」だ。
これが仮に事実だとしても(のちに事実だと判明しても)、情報が出ていない時点では断定できないはず。
こうした悪質な書き込みはシェアしてはいけない。
そもそも、移民であれ、イスラム過激派であれ、それ以外の人が同じ罪を犯したときと罪の重さは変わらない。
生まれが動機に関係することはあるかもしれない(つまり、議論の余地はある)が、犯人を糾弾するために生まれを利用するのは感心しない。
ちなみに、ネット私刑は社会的制裁とみなされ、減刑につながる場合もある。
必ずしもネットユーザーの欲望を満たす結果にならないことだけは指摘しておこう。
身近な人に確認する
キュレーションメディアなどで問題になった生活の知恵や健康情報・民間療法は、ネットユーザーが気づいたからこそ大きな問題になった。
たしかに、情報に騙されたのは人間だ。
だが、嘘の情報を見抜いたのもまた人間である。
「火傷は温めるとよい」などの情報はよほど常識に疎い人でなければ、デマだと見抜くことはできた。
ということは、身近な人に確認すれば、ネットの嘘を見抜けるかもしれない。
このような草の根ファクトチェックが機能するために、重要なことがひとつある。
騙された人をさげすむのではなく、教えることだ。
「騙された方が悪い」の精神でいると、万が一自分が騙されたときに誰も助けてくれなくなる。
嘘を見抜けない人はネットどころか社会から、ひいては現世から駆逐される。
デマであることを教え合わなければ、ネット社会がデマに打ち勝つことはできないだろう。
発信者が誰なのか考える。
差別が含まれる書き込みはシェアせずに無視する。
身近な人に確認することで、騙されるのを防げる。
情報を調べる
確実なソースを当たる
情報を裏付ける際には、信憑性の高いソースを当たらなければならない。
例えば、SNSなどの個人的な書き込みは信憑性が低い。
誰でも身分を隠したり偽ったりして書き込むことができるからだ。
SNSにも有識者はいるとはいえ、公式マークが付いていなければ、なりすましの可能性も否定できない*1。
このように、SNSをソースにすることには高いリスクがある。
そうではなくて、我々には信頼できる資料が必要だ。
企業や政府をはじめとする公式ウェブサイトや、新聞の縮刷版など、過去の資料を当たる方法はいくらでもある。
もしかしたら、そうしたソースが何かの情報をひた隠しにしているかもしれない。
だが、そんなときに信用すべきはネットの書き込みではなくて、その次に信憑性のある情報(複数の関連性のある機関や報道機関など)だ。
書き込みを遡(さかのぼ)る
SNSを何らかの問題提起の足がかりにするためには、急上昇した書き込み・シェア数の多い書き込みを参照してはいけない。
参照すべきは、もっとも最初にされた書き込みだ。
例えば、面白エピソードはbotと呼ばれる、自動的にSNSに書き込むソフトに利用されることが多い。
シェア数欲しさに盗作する人もいるので、伸びている書き込みが大元とは限らない。
同様に、他者の画像を盗用して、別の事実を流す行為もよく見られる。
例えば、2016年の熊本地震では、ライオンが動物園から脱走した旨のツイートが写真とともにSNSに貼られ、拡散された。
これはまぎれもない嘘である。
試しに画像をGoogle画像検索にかけると、明らかに地震以前にアップロードされたと思われる画像が引っかかる。
デマを拡散した犯人は嘘と既存の写真を組み合わせることで、ネットユーザーを混乱させようとしていたのだ。
参考:
「ライオン逃げた」熊本地震直後にうそツイート 男を逮捕 | NHKニュース
書き込みを遡ることの重要性は、一般的な画像ツイートにも言えることである。
おもしろ画像・可愛い動物画像などの名目でツイートされている画像は、アカウントの主が撮影者(ペットの主など)に無断で転載している場合が多い。
ツイートの内容を微妙に変えることで「パクツイ*2」ではないと言い逃れをする者もいる。
中には、他人の書いたイラストを勝手にグッズ(Tシャツやマウスパッドなど)にして販売しているケースもあって、ネットに載っている画像などが必ずしもクリーンでないことは明らかだ。
今回のアイスバーの画像も、デザインを真似た偽物だった。
いずれにしても、SNSに載っている情報は拡散したり紹介したりする前に、それ以前に紹介されている同様の情報がないか確認することが大切だ。
嘘をシェアすることは、嘘をつくことと同罪である。
シェア数と信憑性を切り分ける
もちろん、話題になる書き込みの中にも、事実無根の創作が含まれる。
特定の誰かを傷つけているわけではない場合もあり、騙されても損をしないものも多い。
だが、ネットユーザーの多くが騙されている可能性は大いにあるし、いつ被害につながるかもわからない。
シェア数が伸びているからといって、事実とは限らないのだ。
中には、悪質な書き込みに対する見せしめや、反対する意を示すために書き込みをシェアする人もいる。
ツイッターの場合、引用リツイートはリツイート数に含まれないが、引用リツイートを見た人は元のツイートに簡単にたどり着ける。
エアリプするためにリツイートをする人もおり、自然とシェア数は伸びてしまう。
したがって、シェア数=人気度=信憑性だと思ってはいけない。
「人気だから本当なんだ」「真実を広めるためにシェアしよう」と思ってしまい、知らず識らずのうちに悪に手を染めることになる。
少しでも怪しいと思ったら、GoogleやYahoo!で検索する(もちろん信用できるソースで)などのステップを踏んでからシェアするか判断しよう。
シェアを解除してからでは遅い場合もある。
SNSの書き込みは信憑性が低いので、別のメディアで確認しよう。
古い書き込みを検索して、パクツイや他人の画像を使ったデマに騙されないようにしよう。
嘘が拡散されることもあるので、シェア数が多くても信用できない。
ファクトチェックを信用しよう
さて、冒頭でも指摘した通り、世の中にはファクトチェックをする人がいる。
ファクトチェックとは、証拠を示して嘘を見抜き、事実を確かめる行為である。
最近では、NHKもネットで議論が過熱している事柄を、専門家に取材をして記事にすることが多い。
例えば、水族館でフラッシュ撮影をしてはいけないのか、痴漢冤罪被害者が線路へ「逃走」することは有効なのかなどについて過去に記事が上がっていた。
そのほかにもフットワークの軽いネットメディアが渦中の人に取材をする場合があり、ファクトチェックの材料はどこにでも転がっている。
体制に尻尾を振るメディアももちろんあるのだが、体制に尻尾を振らないメディアがあることも忘れてはならない。
今、ネットユーザーには、ネットの情報をうまく使うことが求められている。