日本はすごくないことを認める必要がある
日本の製造業の信用が失墜するような出来事が相次いでいる。
日産自動車、神戸製鋼、SUBARUという日本を代表する企業が検査の不正や数値の改ざんを発表し、全世界に波紋が広がっている。
かつて世界一と言われた日本のものづくり。このような形で、信用が地の底にまで落ちるのは、残念でならない。
外国人が日本を称賛する番組
ところで、最近では、外国人が日本を褒めるテレビ番組が毎日のように放送されている。
そこからは、あたかも日本の技術や発想は世界中が認める至高のもので、改善の余地がないかのような印象を受ける。
でも、実際には日本は制度面や法令遵守、人材の取り扱いにおいて時代遅れであり、改善していかなければならない。
外資系企業でのマタハラ問題
かつての成功体験に取り憑かれ、伝統を変えようとしない。
これは日本の特定の企業ではなく、日本という社会に根付いたものである気がする。外資系企業で問題が起こっていることからも、それは明らかだ。
次に示すのは、出産・育児休暇の取得によって不当な扱いを受けた例である。
家事・育児は女性が担い、男性は企業のために尽くすという日本を成功に導いた古いモデルが、今でも使われている。
結果として、企業で働く女性や育児休暇を取得したい男性がしわ寄せを受けている。
「出る杭は打たれる」という日本のことわざを体現した事例だといえよう。
モルガン・スタンレー
現在は日本企業の傘下にある三菱UFJモルガン・スタンレー証券で、育児休暇を取得した男性幹部が不当な扱いを受けた。
この幹部は外国人であり、母子手帳を持っておらず、育児休暇の取得が困難だった。DNA鑑定をすることで初めて育児休暇が認められたが、復職後に職場でハラスメントを受けた。
男性はその後、うつ病で休職。復職をしようとしたが、同社から休職命令を受けたという。
この休職命令を一連のマタハラとみなし、男性は同社を訴えた。
ドイツの出版社
実は、ドイツ系の企業の日本支社でも出産・育児休暇に関する訴訟があった。
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出産・育児休暇を終えた女性が海外への転勤か減給かの選択を迫られるという、まさに一般的な意味でのマタハラがドイツの企業でも行われていた。
もちろん、彼らは「外国の企業」なのだが、実際には日本人の幹部や日本の企業からの転職組もいるはずで、日本社会の影響は少なからず受けている。
外資系企業だから健全というわけではなく、日本社会の病に冒されていることに変わりはないようだ。
「黒染め強要」問題
日本社会というのは、学校も例外ではない。黒髪でないことを理由に学校からひどい仕打ちを受けた高校生が、大阪府を訴えた。
原告は生まれつき髪が茶色い女子生徒。
髪の色を理由に、授業や修学旅行への出席を禁じられ、髪を黒く染めることを強要された。結果として、頭皮・頭髪への健康被害や精神的苦痛が生じたとのことだ。
日本人は髪が黒いという幻想
かつて、日本の女性の黒髪を称賛するコマーシャルがあった。日本の女性は誇りだと歌うCMソングをバックに、黒髪の女性が髪をなびかせるというものだ。
「黒髪こそ日本人のあるべき姿だ」と思う人も多いかもしれないが、それは間違っている。
日本人の夫婦の間に産まれながらも、髪の色素が薄かったり、天然の茶髪だったりする人も存在する。それらの人々は存在を無視されてきただけであり、昔からいた。
海外からの厳しい評価
この訴訟はニューヨークタイムズやイギリスの公共放送BBCでも報道されており、世界中でニュースになっている。
前述の製造業の問題を受けて、日本社会の歪(いびつ)さに対する関心は高まっているし、海外の学校でも、同様に特定の髪型を認められないケースがあった。
そうした背景もあり、外国人の金髪さえも黒髪に染めんとする日本の全体主義の異常性が海外でも報道されることとなった。
「すごい」は無限ではない
日本人が「外国人から評価されている日本はすごい」と言っている間に、多くの外国人が日本をひどいと思っている。
外国人に日本を称賛させることで、日本を正当化する悪あがきはもうやめたほうがよい。
たしかに、外国人から評価されている日本のすごいところを探そうと思えば、いくらでも出てくるだろう。
だが、このまま何も変えずに日本のすごいところを探し続けていたら、いずれ枯渇する。
どんなに評価されているものでも、不正や不祥事によって信用が失われ、いずれ評価されなくなる。
場合によっては、そのすごい部分すらも悪として扱われるかもしれない。
外国の権威を借りて「すごい日本」を取り繕う時代は終えんを迎えた。
海外からの評価や数字の比較ではなく、われわれ日本人が真に日本を素晴らしいと思えるような社会を目指さなければならない。