気持ちのサンドバッグ

気になったことを調べて、まとめたり意見を書いたりします。あくまで個人によるエッセイなので、事実関係の確認はご自身でお願いします。

チケット転売対策で作文を課すのが難しい理由

転売ヤー対策で作文を書かせるのは問題がある。

Photo via pixabay

 

転売ヤーは排除できるが……問題も

問題視されるチケットの転売。

 

応募の9割以上が自動プログラムで行われているという調査もある*1

業者が勝ち取ったチケットは高額で転売され、公正公平な抽選に応募したはずのファンがイベントに行けなくなる。

 

転売に憤るユーザーからは「応募者に作文を書かせればよいのでは?」という声も上がっている。

そうすることで、イベントに興味がないのに応募している転売ヤーを弾くことができる。

 

でも、この考え方は危険を孕んでいるように思える。

理由を説明したい。

 

 

 

 

ファン活動に関する懸念

まず、作文はファンの思想を反映したものであるから、ファン活動に影響が出ることが考えられる。

 

ファンの新規参入が難しくなる

そもそも、作文を書くには知識が必要だ。

そのため、この公募方法では、古参のファンが圧倒的に有利になる。

 

でも、ライブやイベントに参加する人の中には、

  • テレビで見て気になった
  • 作品のファンではないが、俳優のファン
  • 昔ファンだったが、最近ファンに復帰した

という人もいる。

そうした人たちは知識が十分にないので、作文を書くのが難しい。

 

熱心なファンしかライブに参加できなくなると、新しいファンが増えづらくなる。

あなたが好きなアーティストはファンの数が伸び悩み、活動を続けられなくなるかもしれない。

 

「公式と解釈違い」のファンがチケットを取れない

アニメなどのファンの中には、作品は好きだが、作者と意見が合わないという人もいる。

例えば、作品内でAとBが結婚するが、AとCが結婚したほうがよかったと思うファンもいる。

そういう人は、作品をよく見ていない「にわかファン」だと思われる可能性が高い。

 

中には、チケットを手に入れたいがために、作者におもねるような意見を書く人もいるだろう。

チケットを手にするために、自分の考えを抑えつければ、自由な解釈が阻害されかねない。

 

熱心なファンしかライブに来なくなる。

作者と意見が合わないファンがチケットを取れないおそれがある。

 

システム上の問題

それから、現実的に考えると、次のような問題も起こりうる。

 

作文自体の転売

残念ながら、転売ヤーの中にもファンはいる。

転売の数は減るだろうが、ファンの転売ヤーが作文を書いた上で応募する可能性がある。

 

それに、作文自体が転売されることも考えられる。

よい作文が転売ヤーの手に渡れば、チケットを手に入れる可能性が高まる。

 

文部科学省がフリマサイトに宿題の出品禁止を要請したことが話題になったが、作文の転売も禁止する必要がありそうだ*2

 

作文を読みきれない

応募者に作文を書かせても、現実には読みきれない。

 

実際に作文を導入したアーティストがいる。

 

人気バンド・マキシマム ザ ホルモンはライブチケットの転売が多発したため、急きょ、追加公演を実施した。

応募のためには作文が必要だったが、全部を読むのに3ヶ月(本人談)かかっている*3

 

最近の人気アーティストのライブに目を向けてみよう。

人気歌手・安室奈美恵さんの最後のライブツアーには510万人(定員75万人)の応募があったという*4


もし、510万人の熱心なファンが作文を送ってきて、英語・中国語・韓国語などの多様な言語で書かれていたら、それを読み切れるだろうか?

 

ファンの転売ヤーが作文を書くかもしれない。

作文の転売が起こる可能性がある。

作文を読むのに時間がかかる。

 

公正公平な審査を

もし、作文を転売ヤー対策に導入するのであれば、中立的な制度が求められる。

 

全部を作文で公募にするのはよくない。

ファンへの救済策として、一定の割合だけそういう席を設けるという風にしたほうがよい。

 

作文は内容が「公式の解釈」にあっているかではなく、量や質で判断すべきだ。

中立性を保つため、審査員に音楽評論家などを入れるのもよいと思う。

 

公式転売サービスや、ブロックチェーンを使ったチケットの追跡などの対策も進んでいる*5

ライブに行きたい人が誰でもチケットを買える世の中が求められている。