過去の反省を活かすことが重要
台風21号は恐ろしい被害をもたらした。
関西国際空港の連絡橋にタンカーが衝突し、空港と本州をつなぐ陸路が破壊された。
空港の施設は停電し、滑走路も高潮で水浸しとなり、空港にとって泣き面に蜂の状況となった。
しかし、今回は片側車線が生きていた上、神戸空港への連絡船もあり、少しずつながらも被災者の避難は進んでいるようだ。
空港や隣接する商業施設にはコンビニが入っていて、非常用の備蓄も十分にあった。
対岸の火事ではない
私たちは今回の孤立に対して、「大きな被害にならなくてよかったね。はい、おしまい」でよいのだろうか?
いや、傍観者になってはいけない。
自分たちの周りでこのような被害があった場合にどうするかを考えなければならない。
自然災害なのに責任はあるのか?
「災害は予測不可能なので、施設の管理者に責任はない」という人もいるかもしれない。
だが、実際に災害で孤立したとき、食料や非常用トイレがないと利用者や従業員は困る。
もし、関西国際空港に備蓄がなかったら、5000人の被災者はどうなったのだろうか?
それこそ責任問題になったはずだ。
自然災害が発生すること自体への責任は誰にもない。
しかし、災害対策や減災をしなかった責任者は確実に非難の対象となる。
非難されないためにも、やれるだけの防災はやっておくべきだ。
施設の管理者などは災害自体への責任を負わないが、可能な限り防災に努めなければならない。
同じ災害は起こらないのか?
「同じ災害は二度と起きないのだから、教訓にする必要はない。」
本当にそうだろうか?
災害が起こるたびに専門家は、過去の災害に類似していると指摘している。
水害が起こった地域に伝説が残っていたとか、そこに住まないよう促す看板があったという話もよく聞く。
それで、実際にそこに住んだ人が被害に遭っている。
2018年に大阪北部で起こった地震では、ブロック塀が倒れたことで死者が発生した。
これは初めてのことではなく、1978年の宮城県沖地震で被害が多発して問題視されていた*1。
過去の災害から学ぶ
こうした事例からもわかるように、過去と同様の災害に遭わないよう備えることが重要である。
- 避難訓練や防災対策会議のようなソフト面
- 耐震構造や非常用電源などのハード面
2つの側面を意識して、施設の管理者は過去にあったような被害を防がなければならない。
似た災害は繰り返される。過去の災害から学ぶべきである。
耐震構造のような設備面だけでなく、避難訓練のようなシステム面での対策も求められる。
予想される災害に備える
南海トラフ地震など、起こると予想されている災害もある。
シミュレーションなどで、起こることがわかっている災害にも備える必要がある。
もちろん、今回のような台風も予想された災害だと言えよう。
タンカーの衝突までは、誰も予想できなかったのだが……。
身近な被害想定・ハザードマップ
被害の予想というと、自治体や専門家の手にしか届かないイメージがある。
だが、自治体のウェブサイトに掲載されたハザードマップは誰でも見られる。
大型商業施設は最初から水害を想定して建てられていると思う。
しかし、個人商店や小さな企業なども、自分たちのおかれた状況を把握するべきだ。
予想されている災害は対策すべきだ。
予想される被害を把握することも大切である。
災害は対症療法
とはいえ、災害に特効薬や絶対的な対処法はない。
実際に被害があった場合に対応する力も必要だ。
例えば、「免震構造だから安心」と言いながらも、実際には被害に遭ってしまうことも考えられる。
そうした場合に、「被害に遭わない前提だったので対策をとっていなかった」ということがあれば困る。
マニュアル外の災害対策も重要
合わせて、実際の災害対策はマニュアル通りに行かない場合もある。
マニュアルを応用して、あるいはマニュアルにとらわれずに柔軟に対応できるリーダーが求められている。
防災マニュアルが教科書だとすれば、マニュアル外の災害対策は試験などの応用問題だといえる。
そうした問題が解けなければ、一人前とはいえないだろう。
それこそ模試(=避難訓練)で練習しておく必要がある。
起こった被害に対して、臨機応変に対応することが求められる。
マニュアル外のことにも対応できるよう、訓練しなければならない。
明らかな不備の責任を負うのは施設側
繰り返しになるが、明らかに誰でもできる対策ができなかった場合に、責任を負うのは施設の管理者だ。
そして、従業員も非難の対象になりうる。
そうならないためにも、できる限りの努力が求められる。