気持ちのサンドバッグ

気になったことを調べて、まとめたり意見を書いたりします。あくまで個人によるエッセイなので、事実関係の確認はご自身でお願いします。

ノートルダム大聖堂火災で浮かび上がった VR動画の重要性

火災前のノートルダム大聖堂にはVR動画で行くことができる。

Image by Peter H from Pixabay

360度カメラが実現する仮想現実のツアー

ノートルダム大聖堂の一部が火災で消失した。

一部の芸術品は無事が確認されているが、尖塔や屋根などが焼け落ちた。

 

キリスト教の一大拠点である大聖堂。

パリ市民、ひいては全世界のキリスト教徒の心の支えであり、そうでない人もその美しさに魅了されていたであろう。

でも、ノートルダム大聖堂は永遠に失われたのか?

 

いや、われわれはネット上のVR動画からノートルダム大聖堂を訪れることができる。


スマホ版のYouTubeで「Notre-dame paris 360」と検索をかければ、パリのノートルダム大聖堂の360度動画が楽しめる。

 

 

 

 

360度動画とは

全方位(360度)カメラで撮ったパノラマ動画である。

動画を見ているスマートフォンやVRゴーグルを動かすことで、全ての方向を見渡せる。

特に、VRゴーグルを通して見れば、実際にその場所に行ったような気分になれる。

 

360度動画には、同じ視点から撮り続けたものもあれば、撮影地を歩き回るものもある。

海や新幹線など、文化財以外でも利用されている。

 

日本語、または英語で「(任意の観光地) 360」と検索してみよう。

運がよければ、VR動画が見られる。

 

旅の醍醐味が感じられない? VR動画

自分の足で訪れることが旅行の醍醐味ではないのか?

 

いいえ、今回の火災でVR動画の重要性がわかったはずだ。

VR動画の最大の意義は、(旅の)体験が保存されることである。

 

もう行けない大聖堂へ

火災で消失した建造物には、二度と訪れることができない。

仮に数年後、数十年後に復元されても、それは元の大聖堂ではない。

 

だが、VRはわれわれを過去の大聖堂へと誘ってくれる。

VRがあれば、もう行くことができない場所にも行けるのだ。

 

季節限定のスポットも

特定の季節にしか見られない景色もある。

記事の執筆当時は春だったので、まさに桜やネモフィラの見頃だった。

そうした景色も、VRならいつでも体感できる。

 

旅行に当てはめるならば、春に日本の桜を見に行きたい外国人が

 

「桜ってどんなだろう?」

「皇居外苑ってどんなところだろう?」

 

と思ったときにいつでも見られる。

旅行の計画にも役立つのだ。

 

現地へ行けない人・身体が不自由な人も

YouTubeなどのVR動画を使えば、目の不自由な人以外は誰でも、好きな場所への旅行を楽しめる。

海や山、車いすが通れない場所も、カメラなら通れる。


あるいは、急な転勤で住む家を決めなければならない人も、VRで物件を見られる。

 

ただ、VRの存在が観光地をバリアフリーにしない言い訳になっているのも事実である。

現地に行くのに越したことはないので、VRはあくまで補助的手段であるべきだ。

 

VR動画は旅した気分になれるだけでなく、時間的・物理的に訪れられない場所にわれわれを招待してくれる。

 

ゲームがノートルダム大聖堂を再現していた?

人気ゲーム「アサシン クリード ユニティ」がパリのノートルダム大聖堂を再現していたことが話題になっている。

これが再建に役立つかもしれないと。

 

ただ、私は「再建」については懐疑的だ。

なぜなら、元通りのノートルダム大聖堂を作ることは不可能である。

 

700年以上の年季は再現できない*1

どんなに形が似ていても、作られるのは新品の別物である。

 

観光資源・祈りの場としてのノートルダム大聖堂は再建が必要だが、本物はもう戻ってこない。

本物を映したVR映像を楽しむぐらいしかできない。

 

ノートルダム大聖堂を再建したとしても、それは燃える前と同じものではない。

 

歴史的建造物の撮影を

ノートルダム大聖堂はVRによって保存されていた。

これは世界的な建造物だから、なし得たことである。

 

日本の地方にある観光地が同じように保存されているとは限らない。

自治体や管理者は専門の撮影業者に依頼するなどして、自分から映像を残すべきだ。

 

実際に、金沢市・福岡市などが市場や祭りの様子を360度撮影して、YouTubeにアップしている。

歴史的建造物も撮影しなければ。

燃えてからでは遅い。

*1:実際のところ、修復工事が行われていたのだが。