個人事業主・生活者にとってのメリット・デメリットとは?
デジタルプラットフォーマー(以下、プラットフォーマー)と呼ばれるウェブサイト・サービスが社会問題になっている。
これは、ネット上にビジネスの場を提供する事業者の総称だ。
「場を提供するだけ」というのが大きな特徴である。
例えば、
- 通販サイト:購買の場を与えているだけ
- フリマサイト:個人間取引の場を与えているだけ
- ライドシェア・出前サービス:個人事業を斡旋しているだけ
- 作品の収益化プログラム:作品を売る・広告を出すのを手伝っているだけ
などがプラットフォーマーに該当する。
プラットフォーマーは、事業者にビジネスをするための場を貸し与え、手数料や会費を受け取る。
この方式の何がメリットで何がデメリットなのか?
論点をまとめる。
プラットフォーマーを使うメリット
低コストでビジネスがはじめられる
プラットフォーマーは事業をはじめるコストが低い。
個人や小規模な事業者でも手軽にサービスを利用できる。
例えば、
- フリマアプリで手作りのアクセサリーを売る。
- イラストを有料で公開する。
- プラットフォーマーのデータ等を利用して、ウェブサービスを作る。
などが簡単に始められる。
従来のビジネスになかったモノ、価値が認められなかったモノも収益化できる。
実際に、売れ残った食品を格安で提供するサービスなどもある。
プラットフォーマーはビジネスの可能性を広げている。
これまで買えなかったモノを買える
生活者目線で言えば、これまでは買えなかったモノを買えるようになった。
珍しい鉄道模型から1日ベビーシッターまで、なんでも手に入る。
新品を買うまでもないが、必要なモノがある場合も便利である。
適切な量・質のモノを安く買える。
選択肢が増える
売り手・買い手ともに、サービス・商品の選択肢が増えた。
Aというサービスに問題があれば、競合のBサービスに乗り換えられる場合がある。
売り手は地価やアクセスを気にせず、ネット上の好きな場所に店を出せる*1。
お店がほとんどない地方の生活者(買い手)でも、何百もの選択肢から買いたいものを選べる。
ネットが普及しただけでも、ビジネスが自由になった感があった。
だが、プラットフォーマーの台頭で、自由度は格段に上がった。
プラットフォーマーのメリット:
事業者は、低コストで手軽に事業を始められる。
生活者は従来より多くの商品を、必要な量・質で安く買えるようになった。
ユーザーはモノ・サービスを自由に選べる。
プラットフォーマーを利用するデメリット
消費者の利便性を重視しなくてもよい
プラットフォーマーは自社の利益を重視する。
解決が自社の不利益につながる場合、問題への対応がなあなあになる。
- 商品にサクラのレビューがついているとき
- 本来は安い商品が、不当に高い値段で出品されているとき
など。
あるいは、消費者の不便につながるような機能がある。
- サイトを見るために便利な機能を有料会員限定にする
- 便利なサードパーティー(第三者が作った)アプリを排除する
- 消費者が邪魔に感じるようなサジェスト(提案)を表示する
など。
あらゆる法的責任を回避できてしまう
場を提供するプラットフォーマー。
その肩書を盾に、法令に従わない企業もある。
そもそも、プラットフォーマーは、自分で生活者に商品を売っているわけではない。
売り手VS買い手を想定した既存の法令の規制を受けない。
また、売り手や買い手の不法行為について、責任を負わない。
売り手と買い手の間の問題は、2者で解決する必要がある。
それから、報酬や手数料などの一方的な変更を明確に規制する法律はない。
個人事業主は雇用された労働者と違い、労働三権(団体交渉権など)も認められていない。
誰かが訴訟を起こし、判例ができない限り、実質的に規制はない。
売り手・買い手のモラル
もちろん、利用者のモラルも問われている。
売り手はお金を手に入れるために、あらゆる手段をとる。
その中には、社会や生活者の不利益になるアコギな商売も。
例えば、
- 盗品や、他人のイラストを使用したグッズを出品する
- 無償配布や限定の商品を高額で転売する
- 第三者の生産した食品を転売する
- 人命に関わる商品を大量購入し、高額で転売する
など。
一方で、買い手の側にも迷惑な客がいる。
例えば、
- 不当に安い値段で発注する。値踏みをする
- 不当に売り手や商品を貶すレビューを投稿する
- ルール違反がない売り手を通報する
- 売り手が値段をつけ間違えたとわかっていながら、商品を大量に購入する
など。
困っている人を助けるためにも、法規制やプラットフォーマーの自主規制が待たれる。
プラットフォーマーのデメリット:
プラットフォーマーは自社の利益を追求し、必ずしも生活者に寄り添った対応をしない。
場を提供しているだけなので、売り手や雇用主の規制法が適用されない。
買い手・売り手ともにモラルの欠如がみられる。
希望:独占禁止法や下請法の規制は受ける
現状の法律は何も禁止していないのか?
プラットフォーマーを利用する人に希望はないのか?
いや、希望はある。
独占禁止法では、「優越的地位の濫用」を禁止している。
これはつまり、立場が上の人が、下の人に理不尽な不利益を与えてはいけないということだ。
例えば、プラットフォーマーが出店者のルールを一方的に変えるのは、これに該当する恐れがある。
現在、規制の検討が進んでおり、プラットフォーマーの優越的地位の濫用が明確に規制される可能性がある。
一方、実質的に企業の下請けになっている場合。
企業とフリーランス(個人事業主)のマッチングサイトなどがこれに該当する。
この場合は、下請けいじめを禁止した下請法が適用される。
このように、明確な規制はないが、救済はある。
プラットフォーマーに対する明文化された法規制は存在しない。
独占禁止法や下請法に違反するという解釈は可能である。
今更なくせない 生活に不可欠のプラットフォーマー
プラットフォーマーには悪い面もある。
だが、プラットフォーマーがなくなったらどうなるだろうか?
事業主はプラットフォーマーの通販サイトをやめて、自前の通販サイトを作る?
それは難しいだろう。
自前の通販サイトの多くは結局、個別の通販サイトを作ってくれるプラットフォーマーに依頼して作られたものだ。
プラットフォーマーがいなくなったら、他に代わりがない、仕事が成り立たないという人もいる。
必要なモノが手に入らない生活者も出てくる。
頭ごなしに禁止するのではなく、適切に運用するためののルールづくりが求められている。
*1:営業していない時間帯に実店舗を貸すなどの「軒先ビジネス」を仲介するプラットフォーマーも存在する。