官報を悪用 プライバシーを掲載の地図
現代の日本で、誰かの個人情報を手に入れるのは難しい。
その数少ない例外が破産者だ。
今、破産者のプライバシーが危機にさらされている。
破産者の名前や住所などの個人情報が地図にされ、ネット上でばらまかれているのだ。
プライバシーを悪用した地図は破産者マップだけではない。
逆に、個人情報を正しく活用した地図もある。
この記事では、破産者マップの問題を中心に、地図を使ったサービスをまとめる。
破産者マップ:個人情報が悪用された経緯
政府は破産者の情報を公開
政府は、官報(政府が出すお知らせ)に破産者の情報を載せている。
債権者(お金を貸してくれた相手など)に、債務者(お金を借りた人など)が破産したことを知らせる必要があるためだ。
破産はお金がなくなり、借金を返すのが難しくなった状態を指す。
その人の代わりに、政府がその人の持ち物を売って、返すお金を用意する。
破産者の個人情報を悪用
債権者のために載せた個人情報。
それを面白がって、地図に載せている人がいる。
以前にも同じような事例があったが、政府の命令を受け、現在は閉鎖されている。
一見すると、政府が出した情報をそっくりそのまま載せているにすぎない。
だが、民間人が破産者の情報を書くのは、個人情報保護法違反になるようだ。
破産者の名誉を傷つけているかは、また別の話である。
削除のために金銭を要求
今回の事例は、極めて悪質なイタズラである。
情報を削除してほしい場合はお金を払えと、運営者は要求している。
仮に破産が事実だとして、破産者はお金を持っていないだろう。
金儲けのためというより、消す気がない意思表示と思われる。
情報がウソだった場合は、被害を受けた人に金銭を要求するという点で、より悪質だ。
参考:
個人情報の保護に関する法律に基づく行政上の対応について(令和4年3月23日) |個人情報保護委員会
地図を正しく活用した事例
事故物件マップ:ウソをつけない
地図に誰かの情報を載せるのは間違っているのか?
必ずしもそうではない。
事故物件を載せた地図がよい例だ。
そもそも、事故物件とは、その中で人が亡くなった家や事務所などを指す。
住む人がよい気持ちにならないし、「幽霊が出るかもしれない」などと不安になる。
そのため、家を売ったり貸したりする不動産会社は、客に知らせる必要がある。
家を買ったり借りたりする客は、事故物件マップを通じて、その家が事故物件か知ることができる。
不動産会社はウソをつけなくなるのだ。
なお、事故物件マップの運営業者は、間違った情報の削除に対応している。
ウソの書き込みで不当に地価や家の値段を下げるのは、許されない。
参考:
報道発表資料:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました - 国土交通省
防災アプリ:災害を地図で見える化
Yahoo!防災速報アプリでは、災害が起きたときに、地図で情報を確認できる。
これを利用して、自分の住んでいる場所の被害状況や警報について、詳しく調べられる。
例えば、1丁目○○町の3世帯10人に避難指示が出ているとき、その区画に色がつく。
地図上でコメントを書くことも可能で、あなたの周りの状況をネットで共有できる。
ちょっとした雷雨であっても、不安な気持ちを和らげられるかもしれない。
避難場所を地図で確認することも可能だ。
その他にも、防災グッズや災害時の心構えもまとめられている。
このアプリを活用し、災害に備えよう。
地図を悪用したイタズラ:同和地区をさらす
一方で、地図を悪用した悪質なサービスもある。
そのひとつが、同和地区を掲載したマップだ。
一部の地域には、他の人が嫌がるような仕事をする人々が暮らしていた。
彼らはひどく差別されており、今でも一部でそれが続いている。
その地域を同和地区と呼ぶ。
現在、同和地区の場所は秘密になっている。
そうすることで、同和地区出身の人々への差別を防いでいる。
同和地区マップはその地区を明らかにしており、極めて悪質だ。
それ以外にも、企業が善意で公開した古地図に、同和地区が載っている問題があった。
地図の利用には、くれぐれも気をつけたい。
個人情報の不正利用にNOを
他人の個人情報は自由に使ってよいものではない。
たとえ個人情報の提供に同意を得たとしても、目的外の使い方をしてはいけない。
実際に、消費者の個人情報が政治活動に悪用された事例がある。
それから、その人のためを思って、同意なく秘密を言ってはいけない。
その人が悪いことをしたからといって、個人情報を公開してよいわけではない。
個人情報に対する間違った認識は、変えていかなければならない。