何も知らないのに誹謗中傷 防ぐための方法
ある業界の仕事によって、被害を受けた労働者を救済するための法律が制定された。
ネット上では、この法律によって、現場に悪影響が出ているという投稿があった。
その投稿を受けて、特定の議員が炎上している。
後述するが、その議員1人が悪いという問題ではない。
それに、議員を叩いたところで、問題は解決しない。
重要なのは、問題点をあぶり出すことである。
この記事では主に、責任者への追及にスポットを当てる。
さまざまな場所で起こっている犯人探しの問題を紹介したい。
ネット私刑と探偵ごっこについては、以前の記事でも説明しているので、割愛する。
1議員の暴走か? 超党派が法案提出
今回炎上したのは、この被害について国会で質問した議員だ。
ネットユーザーの一部はその議員が言い出しっぺで、いわば諸悪の根源だと考えているらしい。
とはいえ、法案を提出したのは、与野党から集まった超党派の議員たちである。
しかも、国会で議論され、可決・成立している。
民主主義の仕組みの中で生まれていて、1議員の暴走で決まったとは言いがたい。
それでも、ネットユーザーはわかりやすい「犯人」を欲しているようだ。
その人は有名な野党議員であり、女性の人権向上を推進する代表格である。
「悪い議員が悪い法律を作ったせいで、国民が苦しんでいる」
悪者を設定して、相関図も「わかりやすく」なった。
でも、犯人を叩いているだけでは、問題は永遠に解決しないだろう。
求められているのは、より適切な解決策であって、特定議員のクビではない。
(情報が不十分なため、犯人かどうかは不明。)
内部を知らず 有名な人を叩く
内部を知らないために、名前が表に出ている人を犯人扱いするネットユーザーがいる。
例えば、ある連続ドラマが視聴者から不評を買っている。
このドラマは長年続いているシリーズの1作で、さまざまな人の目に触れていた。
その作品について、脚本家を非難する声が多い。
しかし、ドラマは脚本家1人によって作られるものではない。
さまざまなスタッフの話し合いがあり、現場でも演出がつく。
俳優がアドリブを入れる場合もある。
つまらなく感じたのを、有名なスタッフ1人の責任にするべきではない。
あなたがつまらないと思ったのであれば、感じた内容を詳しく書くのがよい。
そのほうが番組を面白くするのに役立つはずだ。
少なくとも何もわからない状況で、犯人を攻撃すべきではない。
実は被害者! 真犯人は別の人物だった案件
事件に関する初期の報道は、間違っている場合がある。
まだ情報がない段階で犯人探しをすると、冤罪が発生する。
例えば、千葉県のある民家から、複数の飼い犬が相次いで脱走する事件があった。
その事件の報道は、ある人物らの逮捕で急展開を迎える*1。
捜索にあたった保護団体のメンバーが、犬を盗んだ可能性が浮上したのだ。
2回目の「脱走」が速報された際、多くのネットユーザーが飼い主の責任を問うた。
人に被害が及ぶおそれもあったので、犬が逃げたという速報は妥当だったといえよう。
しかし、人々は判断材料が少ない中で、飼い主を攻撃してしまった。
すぐに善悪を評価すると、飼い主のような被害者が出てしまう。
実際に、警察出身などの専門家も、断定口調で話さない。
まずは報道を静観するのが大事である。
嘘松認定:かき消される告発
「嘘松」は作り話を意味するネットスラングである。
話が矛盾していたり、あいまいだったりする場合に言われることが多い。
書き込みを嘘松と認定する行為は、ほかの人がネット上のウソを見抜くのに役立つ。
悪質な嘘つきは断罪され、ネット上の言論空間から退場する。
しかしながら、嘘松と書き込まれた告発が、あとから事実だと判明する事例もある。
食品の異物混入事故では、そうした現象が起こりやすいようだ*2。
「どうせお前が入れたんだろう!」
告発者は、いわれなき誹謗中傷を受けている。
その他の告発に対しても、さまざまな指摘や批判がある。
- 「事実であれば、お前は○○するべきなのに、していない」
- 「本当に××(職業)なら、つぶやく時間などないはずだ」
「仮に事実だとしても、お前は望んで××になったのだろう?」
そのような二次加害もみられる。
ウソかどうかわからないのに、攻撃が過剰という感がある。
仮に告発がウソだったとして、あなたはなにかの被害を受けるだろうか?
ネットユーザーには、冷静な対処が求められる。
ウソの告発:ユーザーを疑心暗鬼に
一方で、もっともらしい告発がウソだったという事件もある。
それは、ある県(名指し)の学校のPTAから、寄付金を強要されたという告発だ。
たしかに、同調圧力とか、役職の押し付けといった問題がよく言われる。
PTAでそのような事件があっても、おかしくはない。
詳しい内容が書かれていたため、私も信じ込んでしまった。
ところが、途中から発言の内容が過激化し、最終的に告発者のアカウントは消えてしまった。
実際のところ、PTAや学校を知る人からは、矛盾や不可解な点を指摘する声もあった。
告発は作り話、嘘松であったものと思われる。
このような作り話があると、本当の告発も信じてもらえなくなるだろう。
ネットユーザーを疑心暗鬼にさせる悪質な投稿といえる。
そうしたウソの告発を見抜くのは難しい。
いま私たちにできるのは、ウソだとわかったら、すぐにリツイート(シェア)を削除すること。
ウソを打ち消す反証・反論や、事実を広めるのも重要である。
何も書かない それは誰も傷つけない
- 名前の出ている人を悪者と決めつけてしまう。
- 知識がない・判断材料が足りない中で、容疑者を非難する。
- 告発をウソと決めつけ、投稿者を叩く。
こうした発言によって、名誉毀損罪・侮辱罪といった罪に問われる可能性もある。
犯人探しをしていたあなたが、犯人になるかもしれない。
そのような犯人探しによる問題を防ぐ最も確実な方法。
それは、何も書き込まないことだ。
書かなければ、誰も傷つけない。
でも、多くのネットユーザーは、自分の思ったことをすぐに書き込んでしまう。
ネットでの誹謗中傷が厳罰化された今、そうした発言によって牢屋に入るリスクが高まっている。
軽い気持ちでだれかを犯人扱いするのは避けたい。